第287話 どうしてこんな事にっ……!

 遂に……ですか。

 もっと時間が掛かると思っていましたが、やはり皆んな優秀過ぎですね。

 まさか、こうも早くコードEに至るなんて……


「でも何で、このタイミングで何ですかっ!」


 せっかくいい感じで話を締めようとしたのにっ!


「問題はそこでは無いわっ!」


 ど、怒鳴られた。

 いや確かに、それはそうかも知れませんが……怒鳴らなくてもいいじゃないですか!


「ネルヴィア様、すぐに大声を出さないで下さい。

 お茶が溢れたらどうするんですか?」


「おぉ、申し訳ない……」


 見た目とは違って、もういい大人なんだから少しは落ち着きを持って欲しいものですね全く。


「って、そうじゃ無いじゃろっ!?」


 な、何なんですか一体……いつも神王なのにツッコミをしている気もしますが。

 今日は一段と情緒不安定ですね……


「はっ!? もしや、ネルヴィア様も体調が悪いんですね?」


「な、何を……」


「ふむ、熱は無い様ですね。

 ですが、無理はダメですよ! 分かりましか?」


「ええい! 別にどこも悪くないわ!!」


 酷いっ!

 心配しただけなのに、額に当てた手をはたき落とすなんて。

 違うなら違って、普通に言ってくれれば良いのに……


「うぅ……ごめんなさい……」


「ちょっ、妾が悪かった! そんな顔をするでない!

 あぁ〜もう、そうじゃ無くて、何故ここにヤツの配下があるのじゃっ!?」


 あたふたしながら、僕の頭を撫でて疲れた様に叫ぶネルヴィア様。

 ですがもう騙されません! 疲れている様に見えても、実は疲れてなどいないのです!!


「本当に、2人って仲良しだよね」


 仲良し……!


「ふふふ、仲良しですか!」


「フォルクレス殿は余計な口を挟むでない!

 そんな事より、何故この者が……」


「そ、そんな事より……」


 それってつまり、ネルヴィア様は僕とは仲良しでも何でもないって思ってるって事じゃ……


「今のは言葉の綾じゃ!

 妾達は仲良しに決まっているではないか!? 妾と主はマブダチだろう?」


 仲良し……マブダチっ!!


「ふ、ふふふ、ふっふっふ! その通りです!」


「うむうむ、じゃから何故この者がここにおるのか説明を頼む」


「仕方ありませんね……ん? 仕方ないのでしょうか?」


 今のはちょっと意味不明な気がしなくもないですけど……何たってマブダチですしね!


「まぁ良いでしょう。

 リーリスが何故ここにいるのか、その理由はですね……話せば長くなるのですが。

 簡潔に言うと……リーリス!」


「はっ! 如何様にも、このメス豚にお申し付け下さい!!」


 瞬時に僕の足元で跪き、僅かに呼吸を乱し、頬を上気させた恍惚とした表情で平伏するリーリス。


「とまぁ、こう言う訳です」


「「「「「「どう言う訳だ!!」」」」」」


 おぉ、見事なまでに声がハモりましたね。

 う〜ん、仕方ないですね。

 リーリスが何故こうなったのかを一から説明するとしましょうか。


「実はですね。

 アニクスで魔教団を潰した際に、リーリスと彼女の眷属であるハスルートの身柄を拘束したのですが。

 その時は色々と立て込んでまして」


 諸々の処理はイヴァル王とウェスル帝に丸投げしたとは言え。

 残念なフリードの事や、ヴィスデロビアの復活とかもありましたし。

 何よりあの時は貫徹で休息が必要でしたからね!


「そこで後日、僕の身内で最も被害を受けた4人。

 ノア、シア、リーナ、ミーナの4人にリーリスとハスルートの処罰を委ねたのです」


 捕まえずに、あの時に直接手を下す事も出来ましたが……死だけが罰ではない。

 最終的に死に至るとしても、その過程は被害者が判断するべき事。

 世の中、聖女様が言いそうな綺麗事だけでは回らないですからね。


「そして4人が下した処罰が……『僕の忠実な下僕となって、仕える事』だったのです。

 その後のメルヴィーを筆頭にナイトメア幹部による徹底的教育の結果が……」


 跪き、頭を垂れるリーリス。

 見た目だけは忠実な下僕と言えるでしょう、見た目だけは……


「これと言う訳です。

 先程の発言からも分かる通り、今となっては立派なドMへと成り果てました」


「うふっ! 何て辛辣なお言葉と冷たい視線ぅ!!

 もっと私めを蔑んで下さいませっ!!」


「「「「「「「うわぁ……」」」」」」」


 やめて! そんな反応しないで下さい!!

 ぶっちゃけ、何で皆んなに教育を任せてしまったのか後悔してるんですから!!

 学園の事とかで疲れて、面倒だからと一任したあの時の僕をぶん殴ってやりたい……


「何なのかしら、その目は?

 皆様程度にこの私を蔑む事が許されていると思っているのかしら?

 私を蔑んで良いのは、ご主人様とお姉様達だけな……」


「リーリス、少し黙っていて下さい」


「はいぃ! 申し訳ございません。

 どうかこの愚かな私を気が済むまで痛めつけて下さいませ!!」


 うぅ……どうして、こんな事になってしまったんでしょうか……

 いや! この事は気にしないでおきましょう、そうしましょう!!

 ちょっと周囲の視線が痛いですけど、事実僕は何もしてませんしね!!


「それよりも、コードEの詳細の報告をお願いします」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る