第282話 凄い先生なのです!!

 4年Aクラスを叩きのめし、オシークスさんによる大暴露事件から早1月。

 ちょっとやり過ぎたかなと思わなくも無かったですが。

 オシークスさんの暴露事件もあってか、僕は勿論メルヴィーも無事に生徒達にも講師として受け入れられた……ハズです。


「あっ! ルーミエル先生!!」


 うん、確実に受け入れられてますね、これは!

 だって、そうでも無いとこんな風に生徒が笑顔で走り寄って来る事なんてあり得ないですからねっ!!


 最初は嫌々でしたが、こうも慕ってくれる生徒達がいるとやる気も出ると言うもの!

 生徒達に慕われ、凄まじい実力を誇る凄い先生。

 つまり……目指せ、殺◯んせーですっ!!


「今日は授業の日ですか?」


「そうですよ。

 今日は3年AクラスとBクラスの合同授業の日なのです」


 既に全学年で洗礼の儀は終えているので、僕を見た目で見下す様な人は……

 まぁ、いるにはいますが、多少は仕方ない。

 変に言い掛かりをつけられたり、突っ掛かって来ないだけマシです。


「そっか、次は私達の5年Bクラスの授業もして下さいね!」


「勿論です!」


 まぁ、時間割を決めるのは僕では無くて、オシークスさんとレイニーさんですけど。


「あ、そうだ。

 ルーミエル先生、これあげます!」


「おぉ! これはクッキーですね。

 ありがとうございます!!」


「ふふふ、実は昨日、友達と一緒に作ったんです」


 昨日は休日だった訳ですし。

 そりゃあ当然、学園の友達の遊んだりお菓子を作ったりはするでしょうけど

 それを、僕が貰っちゃって良いのでしょうか?


「あの……本当に僕が貰っても良いんですか?」


「勿論ですよ!

 それはルーミエル先生に渡そうと思って作ったのですから!」


 ぼ、僕にっ!

 おぉ〜、これぞー教師冥利に尽きるってやつですね!!


「で、では有り難くいただきますね!」


「はい!

 あっ、そろそろ時間が……また今度、感想を教えて下さいね」


 しかし、最近よく生徒にお菓子をもらいますね……

 もしかして、統一神界には誰にお菓子をあげるハロウィン見たいな行事でもあるのでしょうか?


「っと、僕も急がないと」


 今日はメルヴィーが所用でナイトメアに戻っていますからね。

 メルヴィーと一緒じゃなくて、1人で受け持つ初めての授業。

 講師である僕が遅刻する訳には行きません!!


「よし、頑張りましょう!」


 しかし、このクッキー……めっちゃ美味しそうな匂いが……だ、ダメです!

 講師たる者、生徒の模範とならねばならないのです!!

 そんな立場にいる僕が、廊下で食べ歩きなんて……


「でも……」


 今はメルヴィーもいませんし。

 ここ最近は講師としての仕事もしっかりと頑張って来ました。

 ちょっとくらい羽目を外しても大丈夫……ですよね?


 そ、そうです!

 そもそも、こんなに美味しそうな匂いがするクッキーを無視するなんて不可能! 罪なのです!!


 それに、例え鋼の精神でクッキーを無視して廊下を進んで訓練場に辿り着く事が出来ても……

 きっとクッキーが頭を過って授業に集中なんて出来ないでしょう。


「うん、これはしっかりと仕事をこなす為に仕方無い事なのです」


 周りには……誰もいない様ですね。

 ぐふふ、美味しそうなクッキーちゃん、今僕が食べてあげますよっ!!


「んん〜! 美味しい!」


 多少荒削りですが、僕のために作ってくれた事を考えるとそんな事は関係無くとても美味しい!

 しかし、流石は超越者。

 お菓子作りの才能まであるとは……皆んなの将来が楽しみですね。


「あっ、そろそろ本当に時間が……」


 ここから今日の授業場所である訓練場までは約10分。

 時計が正確なら、もうあと数分もなくチャイムが鳴る事でしょう。

 しかし! 非常勤講師にして凄い先生である僕に死角は無いっ!!


「転移して、授業何始まるまでクッキーを味わうとしましょう」






 *






 転移するルーミエルを物陰から見つめる人影が……


「ル、ルーミエル先生、可愛いっ!」


「特に一人で言い訳してる所なんて、本当にもう!」


「控え目に言って、最高だよぉ!」


 ルーミエルにクッキーを渡した女子生徒を含め、多数の生徒が微笑ましいそうな。

 小さい子供を愛でる様な微笑みを浮かべていた。


 内心で言い訳と自己弁護に必死になっていたルーミエルは知らない。

 生徒達の多くがルーミエルを微笑ましそうに見守っていた事を。


 統一神界学園の生徒達が存外子供好きであり。

 最近よくお菓子を貰うのは、ルーミエルがお菓子好きと言う情報が生徒達の間で広まったからだと、ルーミエルは知る由も無かった。

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