第271話 神と言う領域の余興です!

「叩いて被ってジャンケンポンとは、僕の故郷で一般的な遊びの1つです。

 比較的安全で、ルールも単純なので知らない方でも楽しめます」


 何と言ってもルールは、ジャンケンをして叩くか防ぐかだけですしね。

 これなら子供でも簡単にできるし、経験者と初心者での有利不利が一切無い。

 こう言った宴会の場でのお座敷遊びとしては最適と言えるでしょう!


「とは言え当然、皆んな知らないでしょうから、取り敢えず僕とメルヴィーでお手本を見せます。

 その後にくじ引きで対戦表を作ってトーナメント開始って事で大丈夫でしょうか?」


  皆んな異論は無さそうですね。

 何故か青くなっている、地球を管理する神であるフォルクレスは当然ルールを知っているでしょうけど……

 フォルクレスの出番はトーナメントが始まった後ですからね。


「では、行きますよ。

 ジャンケン……ポン! とこの様に最初にジャンケンをします」


 地球だけでなく、各世界でも何故かある程度は普及しているジャンケン。

 元々は争わずに物事を決めた為に神々が考えたゲームだったのでしょう。


「この場合は僕が勝ったので、この専用の棒でメルヴィーの頭を叩きに行きます。

 それをこうしてメルヴィーが防げばセーフ、防げなければ僕の勝利。

 これを勝者が決まるまで繰り返す、ルールはそれだけです」


 この戦いには不正も運も介入する余地が無い。

 まさしく、身体能力と反射速度がモノを言う実力主義の真剣勝負なのですっ!!


「では、対戦表を決めましょう!」













「少し良いかな、ルーミエル君。

 これは……棄権する事は可能だろうか?」


「不可能です」


 厳選なくじ引きの結果、第一回戦・第一試合に選出されたフォルクレスが若干青褪めつつ頬を痙攣らせる。

 フォルクレスはこのトーナメントにおける主役とすら言えるのに、棄権なんて無理に決まっています。


「しかし、初っ端からとは。

 フォルクレスは凄まじいくじ運ですね!」


「楽しそうだねキミっ!?」


「それはもう!」


 何せ初めて主催した宴会で、僕が主催する遊びトーナメントですからね。

 お酒も入って、そりゃあテンションも上がります! それに……


「ふふふ、よろしくお願いしますね、フォルクレス」


 対戦席に腰掛け悠然と微笑む、艶やかな金の髪に深紅の瞳の美女。

 初戦がフォルクレスとと言う事ですら驚きなのに、対戦相手がオルグイユなんて……ニヤけが止まりませんっ!!


「あ、あはは……」


 冷や汗をかきまくっている様ですね。

 ふふふ、オシークスさんの密告で、フォルクレスの指示で代表挨拶の事を隠されていた事は既に皆んなに報告済み。


 学園から送られてきたプログラムを見て総代が僕だと確信ていた皆んなは流石です。

 メルヴィーも僕が総代だとウキウキしていた様ですが。


 それは皆んなの読みが凄いのであって、普通は誰が総代か何て特定できません!

 そもそも、事前に通達が無い何て事があり得ない!

 シングルであるフォルクレスが学園に圧力をかけた結果ですし、絶対に助けてあげません!!


「それでは、双方準備はよろしいですね?」


 審判を務めるコレールの真剣な面持ちと声に、言い知れぬ緊張感が舞い降りる。

 シングルとダブル上位に匹敵する存在の戦いに、アイリースさんは固唾を呑み。

 これから起こるだろう事を予期するエンヴィーが哀れみの目をフォルクレスに向ける。


「では、初めて下さい」


 開始を告げると同時に強固な結界が展開され、コレールが安全圏へと脱出を果たす。


「「ジャンケン……ポン!」」


 記念すべきジャンケン1回目の結果は、オルグイユがグーでフォルクレスがチョキ。

 オルグイユが即座に手に取った棒を振りかぶり……特別な結界加工が為されたヘルメットをフォルクレスが完全に被る。


「悔い改めなさいっ!!」


 しかしオルグイユの動きは止まらない。

 オルグイユの膨大な魔力を纏った棒が、凄まじい速度で振り下ろされる。


 これまでの経験から警戒は怠っていなかったとは言え、ヘルメットを被った事で一瞬気が緩んだフォルクレスの脳天を、オルグイユの一撃が確かに捉える。


 耳をつんざく様な凄まじい轟音。

 結界の扱いに長けたアヴァリスが展開した結界を揺らす程の凄まじい衝撃。


 これまでの事を知っている者達はまた何かやったのかと呆れた様子で。

 アイリースさんを含む初見の者は唖然と目の前で起こった出来事を眺めて、静寂が場を支配する。


 地面は罅割れ、抉れた地面に顔を埋めて倒れ込むフォルクレス。

 被っていたハズのヘルメットは消し飛び、オルグイユが持っていた棒も負荷に耐え切れずに崩れ去る。


「これは……一時中断として、第二試合へと移行します」


「ふぅ、仕方ありませんね」


 粛々と進行を告げるコレールと、淑女然としたオルグイユの声が静まり返った空間に響き渡り……


「「「「違う遊びが良いです」」」」


 初見の人達。

 アイリースさん、オシークスさん、エネトスさんにネルヴィア様の声が綺麗に揃った。

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