第264話 代表挨拶です!

 聞き間違いでしょうか?

 今、進行役の先生が僕の名前を呼んだ気が……いやいや、そんなハズありませんね。


 学園が始まると言う緊張とストレスで疲れているのでしょう。

 やはり、もっと多くの休息が必要ですね。

 入学式が終わったら帰って暫く寝るとしましょう!


「ふふふ、頑張って下さい。

 私はこの席でお嬢様の勇姿を見守っております!」


 メ、メルヴィー、一体何を……

 それはもう嬉しそうで、誇らしげな顔をしていますが、ちょっと何の事か分かりません。


「さぁ、壇上へどうぞ」


 うわっ、眩しいっ!

 と言うか何故、僕をスポットライトで照らすんですか? 嫌がらせですか?


 ここはメルヴィーに対応を……ダメですね。

 両手を顔の前で握りしめて、頑張って下さいってその体が体現しちゃってます。


「神王様の推薦者であり。

 過去例が無い歴代最高得点を獲得したお方です」


 お方?

 本当にやめて欲しいです。

 ただの入学生に向かって、学園の先生がお方って……講堂内が騒つき始めちゃいましたよ!?

 これは……新手の虐めでしょうか?


 こうなったら仕方が無い……このままこの席に居座ってやります!

 なんと言っても僕はこの見た目ですからね。

 周囲は当然の如く、学園がスポットライトで照らす人を間違えたと判断するでしょう!!


「ふむ、すまぬな皆の者。

 彼女は少し恥ずかしがり屋での……」


 パチン


 新入生代表が姿を現さない事に騒めきが大きくなり始め、再び壇上に立ったオシークスさんが指を鳴らす。


「っ!」


 やられましたっ!

 強制転移……しかも神能まで使ってますね。

 流石にこれをレジストするのは厳しい……


「紹介しよう。

 彼女が今年の新入生代表にして、歴代最高得点者であるルーミエル嬢だ」


 四方八方から突き刺さる大量の視線。

 ヒキニートを極め、多少緩和したとは言え極度の人見知りを発揮する僕に、この場所で何を話せと?


 しかし強制的にとは言え、既に壇上に立ってしまっていますし……あの期待に満ちたメルヴィーの様子。

 メルヴィーに落胆されたくありません!


 それに、メルヴィーが僕が新入生代表である事を知っていたと言う事は、恐らく皆んなも知っている。

 多分リアルタイムでこの場面を覗いているでしょうし……やるしかありません!


 もうこうなったらヤケです!

 ぶっつけ本番! 思いついた事を言って、失敗したらその時はその時ですっ!!


「こほん、皆さん初めまして。

 今回、新入生総代に選ばれたルーミエルと言います」


 まだ多少騒ついてますが、掴みは上々と言ったところでしょう。


「皆さんの中にも、僕が総代である事に不満を持っている人もいるでしょう」


 具体的には最前列左から8人目のキミとか、明らかに不満顔です。

 まぁこの可憐で華奢な幼女ボディーでは仕方ありませんが、入試の時の様に一々文句を言われるのも不愉快です。

 ここで少し釘を刺しておきましょう。


「実際に入学試験では、入り口でオルワルド教授に不正と大声で叫ばれ。

 魔力量計測試験の後は同じ組で試験を受けていた方から不正を疑われました」


 オルワルド教授……かなりお怒りの様ですね、顔が真っ赤です。

 反対にアイリースさんは見た目で僕を不正呼ばわりした事を恥じ入ってる様ですね。

 教授よりも生徒の方が優秀って……世も末ですね。


「この際、ハッキリ言いましょう……僕は見た目で人を判断する様なクズは嫌いです。

 事実として教授に不正と言われた僕はこうして総代を務めています」


 少しだけ威圧を放ったお陰で、静まり返って僕の話を聞いてますね。

 ふっ、想定外の挨拶であっても僕にとっては容易な事なのですっ!!


「この学園で学友となる皆さんが、後に正式に神としてこの学園を巣立つ皆さんが。

 そして僕自身が本質を見ずに外見でしか他者を判断できない、愚かな神とならない様に精進していきたいと思っています。

 以上、新入生総代ルーミエル」


 やりきった……!

 後はお辞儀をして席に戻るのみ。

 要約すると見た目で判断するなってだけですけど….我ながら完璧な仕事ですね。


 最初はまばらに、徐々に大きくなる拍手の中、席に向かって歩みを進める。

 ぶっちゃけかなり恥ずかしいけど、そんな事は今はどうでも良いですね。

 大事なのは……フォルクレスめぇっ! どうやって懲らしめてやりましょうか!?

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