第254話 いざっ、魔力量計測へっ!!

「失礼します。

 筆記試験が終了しましたので、付き添いの皆様方も移動を……」


 部屋のドアを開けて入ってきた試験官さんが、そのままのポーズで硬直。

 まぁその気持ちも分かりますが、こっちを凝視するのは正直やめて欲しい……


「ではお嬢様、参りましょう」


 スッと僕を抱き上げつつ立ち上がったメルヴィーに集まる視線。

 男共の視線には気まずさと僅かな怯えてが宿り、女性達の視線には何故か熱が宿る。


「そうでした。

 試験官様、こちらのゴミはどうすれば宜しいでしょうか?」


 底冷えする様な冷たい目で地面を一瞥したメルヴィーの視線を受けて、未だに硬直していた試験官さんの方がビクッと揺れる。


「お手数ならこちらで処分致しますが」


「い、いえ、当学園内での事ですので。

 我々で対処させて頂きます」


 やはりこの試験官さんは優秀ですね、並の人ならなら悲鳴を上げていても可笑しく無いのに。


「しかし、この方達は何故……」


「控え室に入ると同時に囲まれまして。

 私の事を口説こうとしていた様なのですが、このゴミ共はお嬢様の事を侮辱したのです」


「む、それは初耳です。

 何て言っていたんですか?」


 メルヴィーを口説こうとした事は納得できます。

 絶世の美女でプロモーションも仕事も完璧、それに加えて強いとなれば、モテない訳がない。

 メルヴィーに何の魅力も感じない男なんてもはや男ではありませんっ!!


 メルヴィーが十数名の男性達に囲まれたのは当然の成り行きでしょう。

 そしてライバルの多さに焦って、僕を貶める事を口走ってしまったと。

 それでメルヴィーの怒りを買って、制圧された……自業自得ですが、ちょっと哀れですね。


「お嬢様は、私にお嬢様を貶める言葉を言えと仰るのですか……?」


「っ! ごめんなさい!

 そんなつもりは無くて、ただちょっと気になって……」


 メルヴィーにこんなに悲しそうな顔をさせてしまうなんて!

 コイツらさえ余計な事をしなければっ!

 くっ……明日から1週間の間、頭髪が抜け落ちる恐怖を味あわせてやりますっ!!


 しかし、これで他の付き添いの人達の視線の意味が分かりました。

 男性は礼節を守らず詰め寄った人達の事を恥じ、またメルヴィー覗く冷たい視線には恐怖を覚え。

 女性は十数名を一瞬にして制圧したお姉様であるメルヴィーに憧れを抱いたと言う訳ですね。


 図らずして、メルヴィーが女性にも憧れられるカッコいい女性にはなってしまいましたか。

 流石はメルヴィー、やりますね!


「えーでは、彼らは他の職員に任せ、時間は取らせませんので、後ほど詳しい話をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「申し訳ありませんが、この様な事でお嬢様を煩わせる訳にはいきません。

 このゴミ共の事は完全にそちらにお任せします」


 いつに無く辛辣っ!

 気絶させられた上に、拘束までされていますし…… 本当にこの人達、何て口走ったんでしょうか?


「分かりました。

 この方達が付き添っていた受験生達に事情を伝えるので少々お待ち下さい。

 他の皆様も移動の準備をお願いします」


 試験官さん、有能です。

 もうさっきから、僕の中で試験官さんの株が鰻登りです!

 メガネ教授にも見習って欲しいくらいですね。


「それでは、只今より魔力量計測の試験会場へ移動を開始します」


 筆記試験を終わらせて、ゆっくりと優雅にお茶を楽しむ事も出来ましたし。

 張り切って行きましょう! いざっ、魔力量計測へっ!!

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