第239話 面倒ですね

「学、園っ……」


 ま、まさか、その言葉を聞く日が来ようとは!

 この世界に来て、今まで公の場には殆ど立って来なかったせいで、縁の無かった言葉ですが……


「ど、どうかしたのかな?」


「どうかしたか、ですか?」


 全く、フォルクレスは何をバカげた事を言っているのでしょうか?

 どうしたも何も、学園ですよっ!?


「はぁ、これだから常識の無いフォルクレスはダメなんですよ。

 良いですか? 学園と言えば、異世界モノでもトップに位置する鉄板のテンプレなんですよっ!?」


 僕の遭遇したいテンプレランキングでも上位に位置しますからね。

 今の僕は、見た目相応に目をキラキラと輝かせた幼女にしか見えない事でしょう!!


「当たり前の様に言ってるけど、おかしいのはキミの方だらねっ!?」


「えっ? そ、そうなんですか?」


 じゃ、じゃあ学園って聞いて、テンプレだ! ってはしゃいでいた僕っておかしいの?

 い、いや、学園モノと言うカテゴリーが確立される程の定番である事は紛れもない事実。


 読み漁ったWeb小説では、異世界転移や転生した主人公達もかなりの確率で学園に通ってましたし……

 でもフォルクレスはそのWeb小説を生み出した文明世界を統べる神。

 フォルクレスが僕がおかしいと言うのなら、僕の感性が皆んなとはズレていると言う事……


「まぁ! エルちゃんに、何て酷い事を!」


「ルーちゃん、そんな悲しそうな顔をしないで」


「ルーミエルちゃん……」


 ソシリア達……慰めようとしてくれているんですね。


「お嬢様に対して何て事を……このクズが」


「これは、お仕置きが楽しみね」


「ふふふ、本当にそうですね」


 メルヴィー達も、僕に対しては超絶過保護ですからね。

 事実だとしても、皆んなの前で僕を悪く言うとは……フォルクレス、冥福を祈っております!


「まぁまぁ、落ち着けって。

 コイツをリンチするのは後回しにして、早く嬢ちゃんに詳細を教えてやろうぜ」


「リンチっ!?」


 同じ男神であるバラヴォールからもこの言われよう。

 ちょっとフォルクレスが、エンヴィーと同じいじられキャラに見えてきました。


「で、では気を取り直して。

 キミに行って欲しいのは若い神々が通う統一神界学園。

 実は統一神界からの小言が煩くてね」


「統一神界ですか?」


 聞き慣れない言葉が出てきましたね。

 まぁ大体の予想は付きますけど。


「そう、神界と一口に言っても、実は色々と種類があるんだ。

 例えば私が1人で創り出した神界は個人の神界や、私達が今いる神界の様に複数名で創られた神界」


「つまり、ここは仕事用のオフィスや個室みたいな物で。

 それとは別に会社や国みたいな物がある、と言う事ですね?」


「ご名答。

 統一神界とはその名の通り、全ての神々が足を踏み入れる事が出来る、神々の国の様なモノさ」


 統一神界学園とは、新しく生まれた神々に神としてのルールや戦い方、力の使い方などを教える場所と言ったところでしょう。


「そこのヤツらがね、この世界で神。

 つまりは超越者に至った存在が大勢いるなら学園に通わせろって煩くてね」


 なる程……う〜ん、学園と聞いてテンションは上がりましたけど。

 実際にそこに通うとなると……


「ぶっちゃけ面倒ですね」


「キミならそう言うと思ったよ。

 そもそも学園に通うのは、若い最下級の神が力を付けるためだしね。

 現に10万年前の時点で超越者であり、私達と共に戦ったコレール殿達は通ってないし」


 では僕も通う必要は無いのでは?

 皆んなが言うには、僕って結構強いらしいですし。


「ただ、キミは結構目立ってるからね。

 統一神界ではキミ、凄い噂になってるよ?」


「噂? 僕のですか?」


 いや、それは無いですね。

 そもそも、目立つ行動なんてした覚え無いですからね!!


「そう! だからいずれ、キミの所に直接勧誘が行くと思うんだ」


「えっ、何ですかそれ、面倒なんですけど……」


「でしょ! だからさ、こっちから乗り込んで話を付けに行かない?」

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