第235話 激おこです!!

「ふふ、もう大丈夫ですからね」


「私達がお側に居るのでご安心下さい!」


「メルヴィー! オルグイユ! ぐすぅ、ひっぐ……うぅ」


 優しく抱きしめてくれる2人。

 ゆっくりと撫でてくれたお陰で、呼吸も少し落ち着き、安堵からか身体の力が抜けて行く。


「ふふふ、お疲れですか? ルーミエルお嬢様」


「アヴァリス?」


「はい、アヴァリスです。

 さぁ、ルーミエルお嬢様はこちらにどうぞ」


「アヴァリス様、お嬢様を頼みます」


 アヴァリスまで何故ここに?

 と一瞬考えている間に、アヴァリスの豊満な胸に抱き抱えられてしまいました。


「ええ、任せて下さい。

 まぁ、ルーミエルお嬢様、こんなにも涙を流されて、さぞ怖い思いをなされたのですね……」


「でも、それも当然の報いなのです。

 全部、僕が悪いんです……ぅぅ、ひっぐ」


 脳裏で繰り返し聞こえる、怒ったアフィリス達の声。

 せっかく、こんな僕を友達にしてくれたのに……初めての友達だったのに……


「まぁ! そんな酷い事を言われたのですか?

 あぁ、ルーミエルお嬢様……お可哀想に……ですが、もうご安心下さい。

 その様な方達はあの2人がしっかりと懲らしめますので!!」


 懲らしめる?

 それは、一体どう言う……


「えっと……」


 背後から聞こえるフォルクレスの声に、自然と肩が跳ね上がる。

 奥底から湧き出る恐怖によって、再び僅かに身体が震える。

 そんな不安と恐怖を知ってか、アヴァリスがギュッと抱きしめてくれる。


「実はちょっとした……」


「黙れ、下衆が」


 フォルクレスの言葉を叩き斬るメルヴィーの辛辣な一言。

 恐る恐る、ゆっくりと出来るだけアヴァリスの体や尻尾に隠れる様に振り返ると……


「お前はそこで正座しなさい」


 まるでゴミ屑でも見るような、冷たく無機質な瞳でフォルクレスに命令を下すオルグイユの姿が。

 メルヴィーも同様の視線でフォルクレスを睨み付けてますね……


「さて、アフィリス様。

 今回、お嬢様にこの様な仕打ちをした屑は誰かお教え下さい」


 柔らかな微笑みを浮かべつつも、その瞳は全く笑っていない。

 そんなメルヴィーの視線を向けられたアフィリスが大量の汗を流しながら青褪める。


 全く現状が理解出来ませんが、そのおかげで少しだけ落ち着けた様ですね。

 うん、メルヴィー激おこです!!

 あの視線が向けられているのが僕じゃなくて心底良かったと思えます。


「メルヴィー嬢、今回の事に及んだのはフォルクレス殿、アフィリス嬢そしてソシリア嬢の3名です」


「ちょっ! ボルフレム!?」


 今回の事?

 ちょっと意味が分かりませんが、名前を挙げられたアフィリスが密告者を名を叫び、詰め寄ろうとして……


「そうですか。

 敬称など必要無かった様ですね、アフィリス」


 底冷えする様なメルヴィーの言葉を受けて、硬直した。


「お前も、この屑の隣で正座しなさい」


「ひぃっ!」


 ぽん、と肩を叩かれたアフィリスが悲鳴を上げた……


「何処に行くのかしら?」


「ひぃっ!」


 いつの間にか、こっそりと逃げようとしていたソシリアがオルグイユにニッコリ微笑まれて小さな悲鳴を上げる。


 と言うか、何故ソシリアは逃げようと?

 アフィリスと言い、ちょっと行動の意味が……はっ!? もしや、僕なんかと同じ空間にいるのも嫌って事じゃ……


 ヤバイ。

 認めるのは非常に不本意ですが、また泣いちゃいそうです。


「じ、実は少しお花を摘みに……」


「我慢、出来るわよね?

 もし我慢出来ないのなら、今ここでしなさい」


 アフィリス同様に大量の冷や汗を浮かべ、非常に動揺した様子のソシリア。

 そんな彼女に告げられる、オルグイユの無慈悲な通告。


「我慢できます……」


「そうですか。

 では、お前もあの2人と並んで正座しなさい」


 アフィリスを座らせたメルヴィーまでやって来て、ソシリアに逃げ道なんてあるハズも無く……

 こうして、青い顔で縮こまった3人が正座させられました。

 本当にどう言う事なのでしょうか?

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