第234話 嫌われちゃったぁ!!

「ふんっ、皆さんこんにちは!」


「無視っ!?」


 何やらバカな事を騒いでいるフォルクレスは放置してっと。

 今日はどんなお菓子があるのか、楽しみですっ!!


 あれ? 何故か皆んなの視線が何時もよりも鋭い気がしますね。

 これは明らかにおかしい! も、もしかして、これって皆んな何か怒ってるんじゃ……


「残念ながら、今回は皆んな私の味方なのさ!」


「フォ、フォルクレス、一体何を……」


 ニッコリと微笑みを浮かべるフォルクレス。

 ミスった! 正面から目を離すべきでは無かった……もう怖くて、振り返れません!!


「エルちゃん、私たちの言いたい事分かりますね?」


 ひぃっ! これ絶対に怒ってますよ!!

 いつも優しい聖母のようなソシリアの声なのに、今は恐怖しか感じません!


 これから皆んなに怒られるんだ。

 それで皆んな、きっと僕の事を嫌いになって……

 うぅ、と、取り敢えず落ち着くのです! ひっ、ひっ、ふぅ〜!!


「ふふふ、ルーちゃん、分かるよね?」


 アフィリスまで!

 怖い! 怖い怖い怖い怖い怖い!!

 手が震え、足が震え、身体中が震えて、視界がじわりと滲む。


 襲い来る、猛烈な不安と恐怖で思考が乱れる。

 それが自覚出来ているのに、まともに頭が回らない!!


 友達に嫌われるかも知れない。

 この事実は、ヒキニートぼっちを極めていた僕にとっては最大級の恐怖。


 メルヴィーも、オルグイユもアヴァリスもリュグズールも、頼れる人が誰も居ない。

 不安で押し潰されそう……うぅ、僕が一体何をしたって言うんですかっ!!


「はぁ、まさか分からないんですか?

 これだから全く」


 直ぐ近くに……隣に居たフォルクレスの呆れたような溜息に、ビクッと肩が自然と跳ねる。

 ぐすぅ、うぅ……誰か助けて! せめて近くに居てっ!!


「貴女が迂闊な事をしたせいで、魔王が、魔神ヴィスデロビアが復活したのですよ?」


「それなのに、我々が死ぬ程苦労して封印したと言うのに……」


「それなのに、報告もせずに、丸々2日間も呑気にお眠りですか?」


「だ、だって……」


「だって、じゃありません!」


 ひぃっ! 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!

 ソシリアに怒鳴られた……


「我々の10万年に渡る苦労を水の泡にしてくれた事。

 更には、丸2日間も自堕落に寝て報告にも来なかった事に対して、謝罪も無いのですか?」


「ご、ごめん、なさい……」


「んん? 聞こえませんねぇ?」


「うぅ、ごめん、ひっぐ……なさぃ!

 ぐすぅ、えっぐ……僕が、全部……ひっぐ、悪いんですぅ!」


 魔王が復活したのも。

 報告せずに寝ちゃったのも、全部全部、僕のせい。

 だから皆んなに嫌われちゃったぁ!!


「え? えっ? えっ??」


「「「「「うわぁ……」」」」」


「幼いルーミエル様を泣かせるとは……だから私は辞めろと申しましたのに。

 お可愛そうに」


「ちょっ、エルちゃん、ごめんなさい!」


「ルーちゃん! ちょっとした冗談なんです!!」


 嫌われた……友達に嫌われた……


「ひぃっ! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


「エルちゃん、泣かないで!」


「本当にごめんなさい!」


 初めて出来た友達に嫌われた。

 嫌だっ! 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!


 アフィリスとソシリアの気配が近付いてくる。

 きっと叩かれるんだ。

  逃げなきゃ! でも、足が震えて上手く動かない。

 だからしゃがんで蹲って、謝るしかない。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」


「お嬢様っ!!」


「ルーミエル様っ!!」


 聞き慣れた声と共に、優しい暖かさに包まれる。

 不思議と震えが止まり、恐怖と不安がスゥっと和らぐ。


「ぁあ……メルヴィー? オルグイユ?」


 恐る恐る顔を上げると……何故かここには居るハズも無いメルヴィーとオルグイユの姿。

 2人は優しく抱き寄せて、頭をゆっくりと、落ち着かせる様に撫でてくれました。

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