第226話 お前の負けです!!

「ほいっ!」


 物凄い形相で睨んできたリーリスの顎を蹴り飛ばす。

 見事に吹っ飛びましたね。


「うへ、容赦ねぇ〜」


 リュグズールが苦笑いしてるけど、仕方無いです。

 だって、地面に倒れ込んで丁度いい高さに顎があったし。

 あんな般若みたいな顔で睨まれて、反射的に足が出てしまった僕は悪く無いと思います。


「ぎざまぁ!!」


 うわぁ、砕けた顎が高速で元に戻った。

 毎回思うけど、高速治癒って端的に言って、滅茶苦茶キモいっ!!


「お嬢様、たった今、ユリウス達から連絡が入りました。

 任務完了、との事です」


「了解です!

 と言う事は、作戦は大成功って訳ですね!!」


 ユリウス達、十剣組が一番最後でしたか。

 けどまぁ、ユリウス達は自分達が直接戦場に立つのでは無く、軍隊を率いていましたし。

 最速であるリーナとミーナ達を筆頭に、ナイトメアの皆んなよりも制圧が遅くなるのは当然ですね。


「作戦? どう言う事かしら?」


 如何やらもう回復した様ですね。

 それでもまぁ、ダメージは蓄積されているでしょうけど。


「そうですね。

 もう、余り長引かせるつもりもありませんし、最後なので説明して差し上げましょう」


「あら、傲慢ねぇ。

 もう私に勝ったつもりでっ」


「つもり、じゃ無くて勝ったんです」


 嘲る様な声音のリーリスの言葉を遮りつつ、彼女の四肢を消しは飛ばす。


「っ!!」


「次に騒ぐと頭を消し飛ばしますよ?」


 四肢を消滅させられ、忌々しげに睨んで来ていたリーリスの目が、唐突に驚愕に染まる。


「今のは神能を使ってます、そう簡単に再生は出来ません。

 それにしても、手加減するのは結構気を張りましたよ……」


「手加減……嘘よ、貴女は本気で戦っていたわ!!」


 騒ぐなって言ったのに……まぁ別に良いです。

 これ以上、リーリスの身体に傷を付けるのは忍びないですし。


「そうですよ。

 ですが、本気で戦ってはいても、全力ではありません」


 う〜ん、分かりやすく言えばアレです。

 某戦闘民族が通常状態で本気だけど、スーパーな戦士になって無いから全力では無いって感じですね。

 まぁ、言っても、通じ無いだろうから言いませんけど……


「今回の作戦は全ての魔教団施設を破壊し、捕まっている人々を救出する事。

 僕は、皆んなでは手に余る貴女の足止め役って訳です」


 リーリスには十剣は当然、リーナとミーナですら勝機はありませんからね。


「それに、貴女のその身体を余り傷付けたく無かったですし」


 口を開こうとしていたリーリスが、ピキリと動きを止めた。


「その身体はリーリス、お前のものじゃありませんね?」


「っ!!」


「自身の同格かそれ以上の存在が僕を含めて、最低でも8人。

 そんな状況下でも、お前に余裕があった。

 何時でも肉体を捨てて逃げれると、考えていたのでしょう?」


「くっ!」


「如何やら、図星の様ですね。

 恐らくその身体は、弄ばれて限界を超えて強化された実験体の吸血鬼のもの」


 これが手加減していた最たる理由。

 実験に身体が耐え切れず、想像を絶する激痛の中で死んだ。


 その上、その亡骸をリーリスに乗っ取られた彼女の身体を不用意に傷付けたく無かった。

 まぁ、顎は砕いたし、四肢は消し飛ばしたけど……それは戦闘上、仕方の無い事ですし!


「まさか、手加減されていた事にも気付いていなかったとは……

 僕が本気でお前を消滅させようと思っていたのなら、あの程度の小規模世界じゃ無くて、もっと巨大な世界を創造してましたよ?」


 それ以前に、今の様に神能を用いて全身を消し飛ばせば、多分殺せます。

 まぁ、この身体は埋葬してあげたいので、やりませんけど。


「先程、全ての魔教団支部・拠点の制圧が完了しました。

 理解しましたか?

 完全に。

 完膚なきまでに、お前の負けです!!」

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