第227話 報いを受けて貰いますよ

「さぁ、後はお前の本体を引き摺り出して消し去るだけです」


「っ!!」


 タイミングを図っていたであろうリーリスは一瞬で四肢を再生させ、一気に反転して猛スピードで逃走……


 ドゴォッンッッツ!!


 あたり一帯に地震を発生させながら地面に衝突した。


「くっ……」


 瓦礫を跳ね除け、立ち上がったリーリスを頭上から見下ろし、立ちはだかる7人。

 黒龍フォルムとなったコレールを筆頭に、皆んながその威容を見せつける。


「この僕達から逃れるとでも考えていたのですか?」


「ひぃっ!!」


 怯えた様に悲鳴を上げられてしまった……

 コレール達に気を取られてる間に背後に回って声を掛けただけなのに。

 こんな可憐で幼気な幼女を見て悲鳴って……いや戦闘中だし、敵だし、間違っては無いけど!!


「貴様っ!

 ルーミエル様に間近で微笑まれて、悲鳴を上げるなんて!!

 ルーミエル様のこのお可愛いらしらが理解出来ないのですかっ!?」


 やめてっ!?

 地味なショックを受けた事を察して、庇ってくれるのは嬉しい……

 惨めになるし、何より恥ずかしい!!


「も、悶えてるお嬢様もまた……ご馳走様です」


 メルヴィーさん、何言っちゃってんの!?


「あ、あはは……」


 リュグズールが苦笑いしちゃってますよ!!

 さっきまでのシリアスな雰囲気が台無しです! この微妙な空気……一体どうすれば!?


「コホン……流石にそう何回も逃走を許すハズ無いでしょう?」


「な、無かった事にした……」


 グラトニーが何か呟いてるけど、ちょっと意味がワカリマセンネ。


「滅光結界」


 破滅の光で作られた結界が、リーリスを隔離する。

 これでもう逃走の心配はありませんし、可及的速やかに彼女の本体を引き摺り出すとしましょう。

 そうしましょうっ!!


「この滅光結界は、内部に存在する邪を滅する」


「何ですっ……ギャァアァアッッ!!」


 訝しむ様な表情を作ったリーリスから引き裂く様な悲鳴が上がる。


「滅光は全てを滅し、神すらも滅ぼす神滅の光。

 今回はその対象を邪……貴女達が使う闇の魔力に絞りました」



 ぶっちゃけ、宝玉に侵食されたバカ勇者を助けた時の応用ですけど、効果を絞った滅光の威力は凄まじい。

 バカ勇者の時程度の雑魚だったら一瞬で消滅するでしょう。


「おっ、本体が出て来ましたね」


 リーリスの身体……依代から這い出てくる黒い粘着質な塊。

 神能を持つと言う事は、曲がりなりにもリーリスは精神生命体である神の一角。

 この身体に入る為に物質体を放棄して、魔力のみの精神体となったのでしょうけど……


「ぶっちゃけ、かなりキモいですね」


 まぁ、大戦を経て、彼女の本来の肉体は限界を迎えていたのでしょう。

 力も相当に磨耗していたでしょうし、依代に入らなと消滅していたのでしょう。


「ソレが、本当の姿ですか……」


 ドサッ


 リーリスの身体、抜け殻となった吸血鬼の亡骸が地面に沈む。

 その背後で尚も苦しみに悲鳴を上げ続けるリーリスの本体。


「お前には、報いを受けて貰いますよ」


 紫色の長髪をしたボン・キュ・ボンを地で行く美女。

 最上位のサキュバスであるリーリスは、悲鳴を上げながらもニヤリと笑みを浮かべ……


「っ! コレはっ!!」


 地面が爆ぜた。

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