第219話 神の戦いは静かに始まる、だそうです

 大地が、大気が……世界が震える。

 僕が創り上げた名も無い、アニクスは勿論、その3分の2程度の大きさの地球よりも更に小さい世界。

 とは言え、世界そのものが根幹から震えていた。


 解き放った魔力を無駄に四方に撒き散らす何て事はしない。

 そんな事をするのは、二流です!!

 ……魔力を迸らせるのはカッコいいので偶にやりますけど。


「どうやら、貴女は本当に神に至った存在のようねぇ」


 僕の様な真の一流……いや、超一流の者は体内にて膨大な魔力を制御する。

 リーリスがニヤリと笑みを浮かべると同時に、迸っていた彼女の魔力が静まり返る。


 どうやら、リーリスも本気になった様ですね。

 神能に至った存在……神は自身の魔力を完全に制御して見せて初めて一人前。


 故に、神同士の戦いは静かに始まる。

 って、フォルクレスやアファリス達、大神が偉そうに自慢してましたからね。


 とは言え、敵に威嚇したり、力を見せつけるなら、膨大な魔力を外に放出した方が効率的だし。

 逆に油断ならない敵と相対した場合は、体内で完全に魔力を制御する。

 用は使い方なんですよね。


「リーリスの相手は僕がします。

 皆んなは、ハスルートを連れて実験体として捕まっている人達の保護をお願いします」


「承知致しました。

 しかしながら、我らの内半数がこの場に残る事をお許し下さい」


 半数ですか……まぁ皆んななら1人でもハスルートに遅れを取る事は無いでしょうし。

 実験体にされている人達の保護も十分可能ですね。


「私を前に、呑気に相談とは……余程死にたいのかしらぁ?」


 ちょっと鬱陶しいですね。


「少し静かにしていて下さい。

 滅槍!」


 出現した、僕の数倍はあろうかと言う巨大な光の槍。


 パチン


「っ!!」


 指を鳴らすと同時に、凄まじい速度で滅槍がリーリスに襲い掛かる。

 前方に魔力を集中して直撃は避けた様ですが、槍の勢いは殺せない。

 滅槍に押されて、吹っ飛んで行きましたし、これで暫くは静かになるでしょう。


「我らがこの場に残ります」


 そう言うオルグイユに続く女性陣。

 コレール達、男性陣も若干2名ほど苦笑いを浮かべてますけど、反対意見は無さそうですね。


「分かりました。

 でも、シアとノアは残っちゃダメですよ!

 まだまだ病み上がりな上に、巻き込んじゃうかも知れませんからね!!」


「「っ……承知致しました」」


 二人揃ってそんな顔をされると、胸が痛みますね。

 でも、リーリスとの戦いに巻き込んでしまえば、2人が傷ついてしまいます。

 ……また後で、慰めてあげるとしましょう。


「では、頼みましたよ」


 パチン!


 指を鳴らすと、僕の魔力に当てられて脂汗を浮かべて固まっていたハスルートを含め、コレール達が消える。


「さてと……」


「喰らいなさいっ!!」


 背後、左右から殺到する黒い剣。

 純粋な闇の魔力で構成された剣……滅光魔法でも弾かれますね、これは……


「でも、遅い」


 地上で轟音が鳴り響き土煙が舞い上がる……その光景を上空に浮かんで眺めていたリーリスの背後を取る。


「っ!」


 振り返ったリーリスの顔面に回し蹴りを叩き込む。

 吹き飛ばされたリーリスは、地面に叩きつけられ、地面が割れる。


「今のは頭を消し飛ばすつもりで放ったのですが。

 流石ですね、咄嗟に魔力で防ぎましたか」


「ふふふ、嫌味かしら?」


「いえ、素直な称賛ですよ」


 立ち上がったリーリスは余裕を湛えた微笑みを浮かべる。

 流石の戦闘センス。

 メルヴィーでも荷が重いでしょう、それにこれは恐らく……


 黒い魔力が切断されたリーリスの右腕を包み込み……魔力が晴れると、何事も無かったかの様に右腕が再生される。


「ふふふ、これで仕切り直しね」


「いえ、それは違いますよ」


「何……?」


「貴女は今、地面で僕を見上げている。

 奇襲をして来た時とは立ち位置が入れ替わってしまいましたね」


 挑発する様にニヤリと笑みを浮かべると、リーリスの顔から余裕の笑みが消える。

 翼を広げ、上空で見下す僕に対して……苛立ちと怒り、そして殺意に顔を歪めた。

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