第218話 さぁ、戦いを始めましょうか!

 今リーリスが放っている魔力を遥かに凌駕する莫大な魔力。

 その全てが神能によって完全に制御され、別次元に新たなる世界を創り出す。


 傍から見れば、幼女が何やら厨二チックな事を叫んだ様にしか見えない事でしょう。

 事実、身構えたリーリスとハスルートから訝しむ様な胡散な目で見つめて来ますし……


 ヤメてっ!

 そんなに見詰められると、途轍も無く恥ずかしいじゃないですかっ!!


 全く、これだからデリカシーのなって無い奴らはダメなんですよ。

 新たな世界の創造と、この世界・アグニスの座標を態と一部重ねてやると……


「ふ、ふふふ、残念ねぇ。

 何も起こら無いなんて……とぉっても無ざm」


 はいっ、この通り。

 セリフ途中のリーリスと、嘲る様にニヤケていたハスルートが綺麗に消え去りました!!


 まぁ尤も、僕が創り上げた新たな世界の創造に巻き込まれて、強制的に転移させられただけですけど。

 これで、静かに落ち着いてケーキを味わう事が出来ます!


「ふふん! あの2人の相手は後回しです!

 こんな場所で暴れられては、ケーキにどの様な被害が及ぶか分かったもんじゃありませんからね!!」


「「……」」


「ほら、エンヴィーとグラトニーもいつまでも突っ立って無いで、ケーキを食べましょう!!」


 おかしい。

 僕のお陰で2人もケーキを食べられるのに、何故か2人の視線がジト目な気が……

 まぁ良いでしょう! この際細かい事は気にしません。

 大事なのはケーキが無事、それだけですっ!!




 *




「うわぁ……結構荒れてますね」


 大地は割れ、森は燃え上がり、空は黒く濁り、草原は枯れて無数のクレーターに、そんな終末かと思わせる光景。


 幾ら敵とは言え僕達の事情で待たせるのだから、その間2人持て成そうと、綺麗な景色を用意していたハズなのに……


 見る影もありませんね。

 せっかく感想を聞こうと思っていたのに……どうやら2人はかなりお怒りの様です。


「おっ?」


 背後から凄まじい速度で迫る、巨大な魔力反応。

 僕達がこの世界に来る為の空間の歪みを感知しての奇襲。

 それも転移直後では無く、一息付いて気が緩んだ瞬間を狙っての奇襲……やり手ですね。


 しかもこの速度……十剣の皆んなでも反応すら出来ずにあの世行きです。

 まぁ、神能で100万倍にまで思考を加速させている僕には丸見えですけど。


「なっ!?」


 背後でハスルートが驚愕の声を漏らす。

 最速で放たれたハスルートの一撃は、弾性を持たせた結界によって阻まれる。


「飛びなさい」


 振り向く事すら無く、呟いた瞬間。

 弾性結界によって数倍に威力を高められた反動により、ハスルートが後方へと吹き飛んだ。


 今のカッコよくないですかっ!?

 最高の状況で放たれた、最速の一撃を一瞥する事すら無く倍返しで跳ね返す。

 熱いです! テンション上げ上げですっ!!


 遥か後方で、巨大な崖が轟音と共に崩れ去る。

 それと同時に、僕達の頭上に一瞬で展開される巨大な八重積層魔法陣。


八芒星の抱擁オクタ・レイ!」


 積層魔法陣の更に上空に浮かぶ、リーリスがその腕を振り下ろす。

 八重の魔法陣から放たれる、8つの属性を持つ閃光。


 ユリウスの虹玉の、更に上位互換。

 全ての属性を掛け合わせた虚無属性の一撃。

 しかも、込められた魔力量は、ユリウスとは比べ物になら無い……


「滅砲」


 無造作に頭上に掲げた手から放たれるは全てを……虚無すらも消し去る滅光。

 滅光が虚無の熱線を包み込んで消滅させる。


 滅砲の前には属性の魔法など無意味です。

 手を握ると、滅砲か弾け飛び、周囲が白き光に包まれる。


「滅弾」


 指鉄砲から放たれる極小の弾丸。

 先程のハスルートを遥かに凌ぐ速度で飛来した弾丸は、いつかの様にリーリスの右腕を切り飛ばした。


「くっ!!」


 ゆっくりと地面に着地し、右腕を抑えて殺気の篭った視線で睨み付けて来るリーリス。

 後方は崩れた崖の瓦礫の山が吹き飛んだ。


「ここから、ですね。

 大変長らくお待たせしました……さぁ、戦いを始めましょうか!」


 鬼の様な形相で殺意と魔力を迸らせるリーリスに微笑みかけ、抑えていた魔力を解き放った。

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