第76話 嫉妬の眷属
朝食後のティータイムをゆっくりと過ごした後、再び転移魔法で昨日いた場所までやって来ました。
八大迷宮は内部と外部が強力な結界で遮断されている。
普通の人は当然、コレールですら外部から内部への転移は不可能。
ふっふっふ! その不可能を可能にする僕って凄い!!
昨日、滅牙で貫いたガラスの様なやつが結界だと思うのですが……
それにしても何故、僕はダンジョン内であるこの場所に転移してくることができたのか?
恐らくは僕が深淵の試練のダンジョンマスターだから。
ダンジョンマスターはダンジョン内であれば自由に転移することが可能ですし……
まぁ、今度色々とまとめて神様達に会った時にでも聞くとしましょう。
「それで、これは一体何があったのでしょうか?」
思考を放棄し、改めて目の前の光景を眺めてやっと出てきた言葉がこれ……
「何か我々には想像も付かない事があったようですが……
世の中には知らない方が良いこともあるかと」
「そうですけど……」
目の前に広がる光景。
昨日まであったスケートリンクが無くなり、綺麗な氷の神殿鎮座する。
扉も、壁さえも無い、天井と柱で組まれた神殿。
その中央に置かれた丸テーブルを囲んで、3人の女性が楽しそうにティーパーティを開く。
それだけなら、特に特筆するべき事は無いでしょう。
しかし! 問題はその奥に安置されたある一つのオブジェ。
それによって、この光景は異様なモノへと変貌を遂げる!!
テーブルの奥。
そこに聳え立つ、まるで神像の様に造られた翼を広げた僕の氷像。
その氷像の前には十字架が立て掛けられ、十字架に架けられている人物が1人。
白目を剥いてズタボロになった姿のリヴァさんの姿……
「ふふふ、お待ちしておりました、ルーミエル様」
コレールとの会話が終わったのを察して、オルグイユ達3人が出迎えてくれる。
「オルグイユ、これは一体……」
「ふふふ、ルーミエルお嬢様をお出迎えする為に、一晩かけて作った氷のサロンですよ」
「お嬢様のお陰で、非常に透明度の高い高密度な氷が作り上げられていたので。
ダンジョンの復旧も兼ねて造らせて頂きました」
「如何でしょうか? ルーミエル様」
3人ともとっても良い笑顔で説明しつつ、誇らしげに胸を張る。
確かに綺麗です。
あそこで、お菓子を食べたりしたら楽しいだろうなー、とは思いますが……
「とても綺麗で、凄いと思いますけど……あれは」
「はい!
あのバカにはしっかりと、お仕置きしておきましたのでご安心下さい!!」
「そ、そうですか……」
グッ! サムズアップしてくるオルグイユ。
これって褒めた方が良いのでしょうか?
でも、あのオブジェは流石に……
「はっ!? こ、ここは一体??」
ちょうど良いタイミングで、リヴァさんが目を覚ました。
そして自分が身動きが取れない状態である事を理解した様ですね。
ムォー、ヌォーと言いながら身体を捩っていると……
バチンッ
リヴァさんを十字架に張り付けていた紫電の拘束が切れて。
顔面から地面にダイブ!!
目覚めてからの、この一連の言動。
やはり彼は、新◯劇の団員が何かなのか、と思わざるをえない面白さです!
「いてて」
リヴァさんは鼻をさすりながら起き上がり……虫ケラを見るような3人の冷たい視線を受けて凍りつきました。
そして訪れる静寂。
重い、この空気は重たすぎます!!
リヴァさんなんて、滝の様に冷や汗を流してますし。
この重い空気を空気を、どうにか出来ないものでしょうか?
うーむ、取り敢えず、何か話を切り出さなければ!!
「リヴァイアサン、貴方に聞きます。
僕の眷属となり、僕達と共に来る気はありませんか?」
テンパった末にいきなりの本題を切り出してしまいました……
まぁ、堂々とした感じで言えましたし。
内心のテンパり具合はバレていないでしょう!!
「勿論だよ。
この僕でよければキミの眷属となりてキミを守る盾となろう」
リヴァさんはその場で跪いて、にっこりと微笑みを浮かべました。
「では、貴方に名前を授けましょう。
貴方の名前は、エンヴィーです!」
「了解しました。
このエンヴィー、心身をかけてキミを守り抜くと誓おう」
「エンヴィー、これからよろしくお願いしますね!」
「ああ、こちらこそ」
唐突に切り出した事ですが、滞りなく仲間になってくれて安心です!
「良かったですね、エンヴィー」
「うん、黒龍……いや、コレール、これからよろしくね」
コレールとエンヴィーが中良さげに握手をくみ交わす。
男性がコレールだけと言う状況をどうにか出来て良かったです。
「エンヴィー、私達もよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしく頼みます」
「ふふふ、では帰ったら早速、執事として色々と叩き込んであげますね」
有無を言わさない微笑みを浮かべる女性3人。
エンヴィーは頬を引きつらせながらも頷く。
頑張れエンヴィー!
キミなら生きて戻って来られる……多分。
「じゃあ、早速あの氷のサロンでお茶にしましょう!!」
「あっ! お嬢様、氷の上で走ると危ないですよ!」
スタートを切った僕は案の定、メルヴィーに確保されてしまいした。
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