第3章 帝国ギルド編

第30話 冒険者登録です!

 僕がいきなり声を上げた事でコレール達が驚いた様な顔を向けてきます。

 しかし、今の僕にそれを考慮するだけの余裕はありません。


 いやいやいや、まさかそんな事が出来るはずありませんよね?

 はっはっは、神様達も冗談が過ぎますよねぇ〜。

 まぁ取り敢えずはステータスを確認しましょう、うんそうしましょう。


 そうすれば神様達が送ってきたこのメッセージが、ユニークなジョークだったと言う事が確定しますからね!!




 名前:ルーミエル

 ・性別:女

 ・種族:始祖種吸血鬼(霊鳥)

 ・年齢:無し

 ・レベル:794(760)

 ・二つ名:無し

 ・加護:神々の加護(フォルクレス・アフィリス・ウェルス)new




 ……それから先は急展開を迎えました。

 まずコレール達に名前を考えて貰う必要が無くなった事を、そしてその理由を伝えました。


 するとコレールとオルグイユが超絶過保護になり。

 フェルは何かと言っては、お姉さん顔で僕の世話を焼く様に。


 まぁフェルはいいでしょう。

 実際いきなり身体のサイズが変わって、慣れるまで動きづらいですし助かります。

 しかし、コレールとオルグイユがとにかく面倒でした。


 本を読もうとすれば、手を切らないかと心配され。

 トイレに行こうとすれば怖く無いですからね、と言って必ず二人の内のどちらかが一緒について来る。

 さらには、お風呂にも溺れるとどうするのです!? と必ずオルグイユが付いて来るようになりました。


 因みに、どうやら僕の精神は本当に身体に引っ張られているようで、オルグイユの裸体を見ても特になにも思いませんでした。


 現役ヒキニートで女性に対する耐性値が0を突破しマイナスまで突入した僕がです!

 こっちの世界に来てから多少緩和されたとは言え、以前ならばありえない事です。


 強いて言えばオルグイユの大き過ぎず、かといって小さくも無い。

 完成された双丘と、自身を見比べて少し落ち込んだ程度です。


 やっぱりアレですね。

 どっかの誰かさんに、要ら無いお節介をされたせいですね。

 性別が固定されてしまった事によって、より身体に精神が引っ張られているのでしょう。


 とまぁ、そう言う訳で現在に至るのですが……今度会ったら、やっぱりあのバカ神達を一発殴ってやりたいです。


 因みに、この帝都に入るために前回の失敗を生かし。

 まずはコレールに魔物をお金に変換してもらい、そのお金を使って帝都に入ると言う手を使いました。


 まぁ帝都に入るときにまた衛兵に止められましたが。

 ステータスを表示したら、何やら驚かれましたが、すぐに開放してくれました。



 名前:ルーミエル

 ・性別:女

 ・種族:人間

 ・年齢:8歳

 ・レベル:32



 とまぁ提示したステータスはこの程度のものですけどね。

 それ以前にステータスプレートが通じるのかと言う問題もありましたが。


 なんと、ステータスプレート自体は意外と普及しているようです。

 なんでも幼少期に自身のステータスを確認する為に教会で授けられるのだとか。


 まぁ、貴族などの権力者がステータスプレートを持っている事は知っていたので、そこまで問題になるとは元々思っていませんでしたけどね。


 衛兵さんも流石に僕がステータスを偽装して書き換えているとは思わなかったのでしょう。


 笑顔で門を通してくれました。

 そればかりか、なんと僕が怪しい者じゃ無いと保証する、仮の身分証まで発行してくれました。


 因みに、僕が現在一人なのにも勿論理由があります。

 帝都に入る為に協力してもらったコレールは、情報収集と物資の買い出し。

 それと、今夜の宿を取りに行ってもらっています。


 オルグイユとフェルは今回連れて来たいません。

 そもそも今回は、僕がオルグイユから逃げてきた感じですからね。


 フェルにはオルグイユの監視という最優先任務を与えてますし、今頃オルグイユはフェルの遊びに付き合わされている事でしょう。


 さて、そんな僕が現在向かっている場所は先日も行った冒険者ギルドです。

 商業ギルドにも登録したいですけど、まずは冒険者登録です!


 商業ギルドに登録して商売をするにしても、組織を運営するにしても、まずは資金が無いと何も出来ませんからね。


 しかし、1つだけ懸念事項があります。

 先日、冒険者ギルドの天井を吹き飛ばしてしまいましたけど、大丈夫でしょうか?


 もしこれで冒険者ギルドが休業でもしていれば……自業自得とは言え、ちょっと予定がズレてしまいます。


「あの、すみません。

 冒険者ギルドに行きたいのですが、どちらに行けばいいのかわからなくて」


「えっ! ぼ、冒険者ギルドならこの道をまっすぐ行ったら着くよ!!」


 冒険者ギルドの場所を冒険者風の青年に聞い結果。

 驚いたような顔になった後に、何故か慌てたように教えてくれました。

 すぐに走り去ってしまいましたけど……


 僕ってそんなに変な容姿をしているのでしょうか?

 これは神様達に要相談ですね。

 まぁ、次いつ会えるかも分かりませんけど。


 青年の言った通り暫く歩いていると、冒険者ギルドと思われる建物が見えてきました。うん、既視感がありますね。


 それにしても驚きました。

 まさか先日吹き飛ばした天井が、既に完全に元に戻っているとは……


 けどまぁ、この世界には魔法がありますからね。

 地球の技術では不可能でも、魔法という不確定要素を使えば可能なのでしょう。


「それにしても……」


 こうも周囲から視線が注がれると、今回も上手くいくかどうか不安になってきます。


「はぁ……けど! ここでこうしていても意味はありませんね!!

 よし、頑張りましょう」


 冒険者ギルドの扉を開くと、周囲の冒険者達の視線が一斉に集中。

 少したじろぎそうになりましたが、まぁ今更この程度の事を気にするだけ無駄でしょう。


 今も皆んなが凝視するように僕を見ていますが……気にしたら負けですね。

 空いている受付は……ラッキーです! 1つだけ誰も並んでいない受付がありました。


「すみません、大丈夫ですか?」


 う〜ん、受付嬢さんも呆けたような顔をしていますね。

 何かあったのでしょうか?


「あっ、はい、申し訳ありません。

 それでお客様、本日はご依頼の申し込みですか?」


「いえ、違いますよ。

 ここで冒険者登録って出来ますよね?」


「え、ええ、可能ですが…」


「では、僕を冒険者登録してもらえますか?」


 すると、今までざわついていたギルド内が凍りついたように静まり返りました……


「えっと……どうかしたのですか?」


「い、いえ、しかし本当に冒険者になるおつもりですか?

 冒険者とは死の危険がある仕事ですよ」


 おぉ! 気遣ってくれるとは、この受付嬢さんは良い人ですね。

 けどまぁ、多分大丈夫でしょう。


 これでも一応、八大迷宮の一角を攻略していますし。

 まぁ目立ちたく無いので、その事を言う気はありませんけど。


「はい、これでも剣の腕には多少の自信がありますから」


「そうですか、わかりました。

 ではこちらの書類に必要事項を記入して下さい。

 記入するのはお名前と性別、年齢だけでも構いません。

 代筆は必要ですか?」


「いえ、大丈夫です」


 それにしても、身分証ともなる冒険者ギルドのカードを発行するのに必要な重要項目が名前だけとは……地球では考えられ無いですね。


「そうだ、帝都に入る時に衛兵さんに、これを渡しなさいって言われたのですが」


 受付嬢さんに差し出したのは、衛兵さんが発行してくれた仮の身分証です。

 外壁の門で冒険者になるつもりだと言ったら、受付で渡すといいってこれを渡してくれたあの衛兵さんも優しい人ですよね。


 日本ではそこまで人に優しい人はなかなかいませんからね。

 特に僕の周囲に居た人達は利益を何よりも優先する様な人達ばかりでしたからね。


 取り敢えず、必要事項と特技に剣術と書きましたけど……本当にこれだけでよかったのでしょうか?


「じゃあ、これでお願いします」


「では、少々お待ちください」


 記入した用紙を受付嬢さんに渡すと、彼女はそう言って奥に行って、すぐに戻ってきました、そして……


「申し訳ありませんが、少しお話を聞いてもよろしいでしょうか?」


 受付嬢さんと共に奥から出てきた、できる秘書と言った女性がそう話しかけてきました。


 やっぱり来ましたか……ふっふっふ! 前回の経験からこうなる事は予測済みです!!

 ここからが本当の勝負どころですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る