嘘つきな正直者

人々は毒を吐き彼の前に壁を築き上げていく


壁の隙間から伸ばされた救いを求める手を

彼は必死に繋ぎ止めようとした


だが人々は罵声と共に引き剥がし

壁の向こうへ引きづられていく


“悪魔の言葉を信じるな”


“秩序を乱す事は許されない”


捲し立てる様に聞こえてくる罵声


壁の向こうから彼を見下す様に

恐ろしい目つきの顔が睨んでいる


“自分達こそが絶対の秩序だ”


壁の隙間から怒号と共に彼の側に投げ込まれたのは

先程、手を差し出していた者の亡骸だった














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