第101話:新入部員勧誘 (下)
そう決めたはいいもの、ここで彩乃を連れて逃げるというのはそれはそれでちょっと気に食わないということで誰が一番最初に話し掛けるかジャンケンを始めた例の五人組は一旦放っておくことにした俺は何となくそいつらの近くに陣取っているサッカー部へと目を向けると、一人の男子部員がこれまた一人の新入生を女子マネへと勧誘しているところだったのだが
(あれ、アイツって)
そう思った瞬間いきなり彩乃が俺の右腕に抱き着いてきて
「なに見てるの?」
「びっくりしたー。なんだよいきなり?」
「んぅ、私に何か隠し事してるでしょ?」
「ひぃてなゃい、ひぃてにゃい (してない、してない)」
本音を言えばこんな人前で彼女とイチャイチャするなど恥ずかしくて嫌なのだが、先ほどの件に関しては一先ず自分の心の中で留めておきたかったためそんな嘘をついたものの彩乃には簡単にバレてしまったのかその手を緩めるどころかお互いの距離が少し縮まり
「正直に言わないと……明日のお弁当は白ご飯・みそ汁・皮と種だけ取ったアボカドの三つだけにしちゃうから」
「まへまへまへ、あほかとあへはあめろ! あほかとはひつほあひゃのあすくってふれるあらだいひてうれなあふべあれあいおとをいってるあおうが! (待て待て待て、アボカドだけはやめろ! アボカドはいつも彩乃が作ってくれるサラダにしてくれなきゃ食べられないことを知ってるだろうが!)」
「ひーくんが嫌いなアボカドは私が作る特製サラダじゃなきゃ食べられないんもんね~」
声色はもちろん表情からも彼女が怒っていないことは最初から分かっていたのだが、その割には頬を引っ張られたり、意地悪を言われたりと若干戸惑っていると俺達の前に向井がやってきて
「あとは俺が一人でやるからお前らはもう部活に行け。というかクビ」
「「(よしっ!)」」
(ん? 今彩乃も小声で『よしっ!』って言ったような……気のせいか?)
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