第81話:その頃彩乃は

もしあれだったらひーくんの分も一緒に注文してあげようかとも思ったのだが、どこか緊張したような雰囲気を纏わせながらも菱沼の後ろに並ぶ彼の姿を見て私は明日香と先に席へと移動してから数分……


何かいいことがあったのか今度は嬉しそうにしながら私の隣に座ってきて、話は時間に余裕がある時によくサービスで店員さんが書いてくれる絵やメッセージのものへとなった。


ちなみに私達が並んだところの人はちょっと年上のお姉さんだったり、後ろに誰も並んでいなかったこともあり準備ができるまで三人でお話したためかそれぞれに合わせたメッセージを書いてくれた。


それに対し菱沼のには『Thank You』とだけ書かれていたので多分ひーくんも同じだったのかな? とか思っていたのもつかの間


「『CRF』キ○ラメルフラペチーノの略だけだな」


(それは流石にアンタの見間違いで―――)


「………今日初めてス○バに来たけどもう二度と行かない」


(あ~、ひーくんは入れ物にメッセージとかを書いてもらえるのに憧れがあったけど中々行く機会がなかったからあんなに嬉しそうにしてたんだ)


(じゃなくて! なんで菱沼のには書いて私の彼氏のには書かないのさ、あのクソ店員。そんなんだから彼女いないんじゃないの? って、あんな奴のことはどうでもよくて。えーと、確か鞄の中に筆箱が……あったあった)


それから私はパパッと、でも丁寧にクマの絵とメッセージの代わりに『 \ガオー/ 』というセリフを書いてあげ


「はい、これひーくんの分♪」


「………彩乃と一緒ならまた来てあげなくもない」


(本当は嬉しいくせに二人がいるから素直に喜べないひーくん、かわいい~♡)


そんな二人っきりでデートをしてる時には見れない彼の姿を見ることができて幸せな気持ちになれたので、そのままの状態で一緒に買ったケーキを食べようとした瞬間


「なんでお前はそんなに上から目線なん―――」


(余計なこと言うな馬鹿!)


「いっーーー⁉ (誰だ、俺の脛を蹴った奴は?)」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る