第62話:ちゃんと準備はしてきました (彩乃視点)

「………………」


(あれ? 何時もなら私がはなまるをあげたらほっとしたような顔をしながら普段通りのテンションに戻るのに、今日はまだちょっと緊張している)


「もしかしてまだ私にプレゼントがあったりした?」


「彩乃に言われた証拠ってやつがまだある」


(てっきりプレゼントを選んでくれただけで一杯いっぱいになっちゃって忘れてるのかと思ってたけど、ちゃんと覚えててくれたんだ。………キスとか?)


(今日はお昼ご飯の後にリップを塗り直しただけだから大丈夫だとは思うけど、念のためお手洗いで―――)


「一回そのキーケースを箱から出してもらってもいい?」


そんなひーくんの言葉に対しちょっと予想外だった私は若干戸惑ったような返事を返しながらも一旦抱き着くのを止め、両手でそれを持ち上げると


(あれ? キーケースにしてはちょっと重い。中に何か入っているとか?)


そう思った私はゆっくりそれを開けてみると……既に四個中三個のフックに何かの鍵が取り付けられており


「一番左は実家の鍵でも付けてくれってことで。えーと、左から二番目のやつから順番に俺が一人暮らしをしている家の鍵、空き部屋の鍵、俺が使ってる部屋の鍵。あとこれ」


そう言いながら彼がさっきまでキーケースを包んでいた薄い紙をどけると、カードサイズの紙に何かを書きそれをラミネート加工したものが出てきた。


《彩乃限定・新しいキーケースを買ってあげる券 (有効期限・使用回数ともに∞)》


(私のひーくんが凄い急成長をしたかも⁉)

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