第16話:その頃彩乃は
今日の体育は二時間目にあったため普通に三時間目・四時間目と座学が続いたのだが、さっきのシャトルランで疲れてしまったのか私が気づいた時には一之瀬君が静かに眠っていた。
しかし授業中に寝落ちしてしまったのか彼は私の方に顔を向けた状態で眠っていたため最初は何となくその姿を見ていたものの、時間が経つにつれて普段の一之瀬君からは想像できない隙の多さ、シャトルランをしていた時のカッコイイ顔とは真逆の可愛らしい寝顔などなど。
兎に角普段とのギャップが凄すぎて途中から先生の話など全く聞いていなかったのは内緒である。
(あー、どうせなら写真撮っておけばよかったかも)
なんてことを考えながら明日香とお昼ご飯を食べているとシャトルランの学年最高記録が出たという情報が入ってきた。
「あらら、残念だったね彩乃ちゃん」
「んー、別に私は最後の一人になるくら本気で走ってた一之瀬君の姿が、当時の最高記録を抜いた瞬間の一之瀬君の姿が、最後の最後に力を振り絞って150回に間に合った瞬間の姿が……っていう瞬間瞬間にキュンときただけで記録自体にときめいたわけじゃないからなぁ。まあ確かにちょっと残念ではあるけど」
そう返しながらタオル地のひざ掛けを頭から被ってしまった一之瀬君の方へと視線を向けると明日香が
「多分だけどよーくのこれは悔しくてとかじゃなく普通に眠くて寝てるだけだと思うよ。さっきも欠伸してたし」
「いや、でも流石に」
「おい、先生になんでまだ○○が走ってるのに途中で止めたのか聞きに行ったら、急用の電話に出てたせいで止められなかっただけで記録としては145回らしいぞ!」
「はあっ? じゃあさっきの153回って数字はなんだよ」
「それは○○が勝手に走ってただけで、実際は途中から線を踏んでなかったんだと」
(ということはもしかして?)
「あとこの学年の最高記録は一之瀬の150回で今年は確定だってさ」
「よかったね、彩乃ちゃん」
「うん♪」
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