【ハナウタ】

ねぇ おかあさん

あの歌を唄って


何度もせがんだけれど

一度も歌ってくれなかったおかあさん


歌は下手なのよ


恥ずかしそうに言っていたけれど

私は知っている


洗濯物を干すとき

洗い物をするとき

いつもおかあさんは

同じ歌を唄っていたでしょう


ねぇ おかあさん

そんなに泣かないで

あの歌を唄って


それほど私は悲しくはないの

みんながいつも鉛を飲み込んだような顔で

この部屋を出ていくたびに

ただ辛くなるだけ


ねぇ おかあさん

あの歌を唄って


きっと笑顔でさようならが出来るから

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る