恋人を名乗る美少女が現れたが、魔王の娘だった!?
@wakiyaku0033
第1話
「あなたを愛しています。勿論、この世界の誰にも後れを取らないほどに……」
甘い言葉を眼前でつぶやき、彼女はその薄い紅色に染まった柔らかな唇で俺の口を塞いでくる。
目の前に広がるのは目を瞑った整った顔立ちの美少女の顔。
鼻をくすぐる女の子特有の甘い香りに俺の頭も一瞬とは言えとろけてしまいそうだが、残念ながら俺の中にある良心がそうはさせてくれなかった。
こうして美少女に唇を……しかも、ファーストキスを奪われたのは夢のような話ではある。
だけど、同時に罪悪感も半端ではない。何故なら、俺は彼女を”全く知らない”からだ。
「あなたが悪いのですよ? 私の前から姿を消して、残された私がどれほどあなたに対しての想いを募らせたことか……」
ほんの少しの口づけを終えて、彼女は俺から視線を逸らして顔を真っ赤に染めて告げる。
まるで拗ねた子供の様だが、チラチラと俺の様子を確認しているところが愛らしい。素直にそう思えるくらいに彼女は魅力的だった。
だが、それと同時に胸を締め付けるような罪悪感が俺を襲う。
彼女は絶対に俺を誰かと間違えている。何処の誰と間違えているのかは知らないが、こんな美少女を放って姿を消すとは嘆かわしい輩もいるもんだな。
まぁ、俺に似ているという時点でなんだか親近感が湧く気もするんだけれど。
「本当に、会いたかったんですからね……? あなたに……ただ、あなたに会うためだけに私は……」
そんな俺の想いなんて全く知らない様子で、彼女は俺にその発育の良い胸を押し付けて惚けたように見据えてきている。
正直、物凄く可愛い。
整った顔立ちもさることながら、彼女のボディーラインはテレビなんかで見るアイドルに引けを取らない。
まさに美少女と言える相手に対して”好きだ”とか、”愛してる”だとかささやかれて、理性がまだ爆発しないのは罪悪感と俺に彼女を襲う度胸が無いからだろう。
ヘタレと呼ばれても仕方のないことだとは思う。
だって見知らぬ美少女なんだぞ?
何かのドッキリ番組なんじゃないかと思えて仕方ないし、襲ったところを写されたりでもしたら俺が社会的に死んでしまうだろう。
「愛して、います……」
そんな俺の不安をよそに、ニコリと微笑み俺に愛を呟く彼女の八重歯。
それは人のソレとは明らかに長さが異なり、それでいて鋭さが倍以上にもなっている。まるで、本当に小さなナイフを直接牙に見立てて歯に移植しているようにも見えなくない。
だが、きっとそんな鋭さを持っている八重歯であっても、噛まれたところであまり痛くないんだろうなと思えるよ。
何故なら、俺は一度彼女のその長い八重歯に似たものを持つ幼女を知っているからだ。
いや、知ってるだけじゃない。俺は噛まれたんだよ。
おそらく数時間ほど前の出来事だが、俺は……龍宮颯馬はソレを鮮明に覚えている。
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