第6話 卒業祝い

無事卒業式も終わりみんながそれぞれ友人や後輩と話をするなかボクは家庭科部の面々に囲まれていた。

家庭科部はボクの所属していた部活である。内容としては裁縫や料理等の家事全般のスキルアップを目指すという部活だ。


「那月先輩今までありがとうございました!」

「先輩のおかげでバレンタインにチョコ渡して付き合うことが出来ました。」

「これみんなで買った物なんですけど良ければ貰ってくれませんか?」


そう言って渡してきたのは長めのストールだった。


「この前雑誌見ていたら先輩が載っていたんでみんなで似合う物をって。」

「それで私たちがみんなで買いました。それと花束もどうぞ!」


そんなにみんなボクのことを慕ってくれていたなんて、素直に嬉しい。

ただそれでも言いたいことがある。


「みんなありがとう。だけどこのストールって女性用だよね?」

「当たり前じゃないですか。」

「ボクの性別は?」

「女ですよね?」

「待って!?ボクは男だよ!?」


そう言うと家庭科部所か周りの生徒がボクを見た。ただその視線は何故かまたまたご冗談をみたいな生暖かい目をしている。


「だって先輩この前女性誌に載っていましたよね?」

「ボクの知らないところでね。」

「あの女性誌って載せないんですよ。」

「そうなの!?」


ボクの知らない事実が今解き明かされた。


「いやーだからみんなして那月先輩やっぱり女性だったんだーってなりましたよ。」

「胸は盛らないといけないほど絶壁でも綺麗な肌と髪なんですから女性しかないって。」

「いやいや、ボクは男だからね?普通に男子トイレに行くし。」


髪や肌の手入れをしているから綺麗って言われたら嬉しいけどまさかそこからも女性かもという噂が出ていたのか。


「とにかくボクは男だよ。それでもストールは嬉しいし使わせてもらうよ。」

「それは良かったです。改めて那月先輩本当にありがとうございました!」

「「「「「ありがとうございました!」」」」」


こうしてボクの中学校生活は終わった。中々に楽しかったし後輩や同級生はみんな優しかったからとてもよかった。

そうして1人で校門前で待っていると拓馬、千夏、卯月がやってきた。


「3人とも遅かったね。」

「そりゃあねー。私も千夏ちゃんも告白されたんだよ。卒業だし会えなくなるからって。」

「そーそー。卯月なんてアイドルも始めたから余計にね。それに拓馬だって制服のボタンないじゃない。」


急いできたから服装が乱れているのかと思ったらボタンがないから留られないのか。


「俺は頼まれたから渡しただけだよ。それに第2ボタンだけはちゃんと死守した。」

「拓馬誰か好きな人いるの?」

「いないけど争いになりそうで誰にも渡さなかった。」

「なるほどね。」


みんな苦労していたんだな。


「そういや那月は告白されなかったのか?俺よりも人気はあるだろ?」

「いや?ボクは家庭科部のみんなと話してからずっとここにいたけどクラスのみんなが挨拶に来たくらいだよ。」

「そうなのか?卯月と千夏はどうしてか分かるか?」

「そりゃ、性別があやふやだからでしょ。」

「性別があやふや。」

「だから男子も女子も告白できないのよ。それに容姿端麗、勉強もスポーツもある程度出来て家事全般なんてそんじょそこらの主婦よりもできるし那月は高嶺の花扱いだから中々近づけないのよ。」


今日はよく自分の知らない周りの事情を知るなぁ。


そうして話がながらボクたちは中学校を卒業して愛香姉の喫茶店へと歩いた。既に喫茶店にはボクの母や東雲さん、拓馬の両親もいるらしく少し急いで向かった。


喫茶店に着くとcloseとなっていたので貸切になっているのだろう。扉を開けてはいるとクラッカーの鳴り響く音がした。


「「「「「「「4人とも卒業おめでとう!」」」」」」」


母達からのお祝いの言葉に涙ぐむ。始まった卒業祝いはとても賑やかなものだった。


「那月、卒業おめでとう。」

「卒業おめでとうね。」

「ありがとうございます。まがねさん、立華りっかさん。」


拓馬の両親の2人とは久しぶりだ。


「高校生になったらうちにバイトに来てくれよ。」

「そうね、うちに来てくれるといいわ。もしくは拓馬と交換しましょ。」

「それは拓馬が可哀想なのでは。」

「拓馬は忙しい時にいないから那月くんの方がいいのよ。」

「まぁ交換は無理ですがお手伝いには行きますよ。」

「頼むぜ。」


そうしてその後は近況報告みたいなことを話した。モデルの件に関しては騙された、ボクは被害者だと言ったら鉄さんと立華さんは笑って理解してくれた。


「那月くんはうちにもバイトに来てくれると嬉しいんだがな?」

「そうですよぉ、私たちも那月くんが高校生になるまでは頼まなかったんですから。」


そう言って来てくれたのはダンディなおじさんで愛香姉の父親である勝己かつみさんに母親である妙枝たえさん。


「那月くんは料理も愛想もいいからうちにも来て欲しいんだよ。」

「こっちだって器量よしの那月にきてもらいてぇのよ。」


そうして言い争う2人。もともとボクたちの両親がクラスメイトだったらしく昔からこんな付き合いをしているらしい。


「なら月水金日はまなかで火木土はうちでどう?」

「それでいいかなぁ。」

「ボクの休みがないんですが!?」


気づいた時にはボクは喫茶店まなかと洋菓子店「鉄華てっか」でバイトすることになった。

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