【1/全校生徒】
三角さんかく
【俺は英雄にならない】☆❤︎
「レベル15なのに、ランクアップしないってどう言うことよっ」
ギルドの受付のお姉さんに迫られて、俺は
冒険者達の集まるこの街で、俺は一人の冒険者として、
はあ〜、今日も綺麗だなあ。と心の中で
「あんたねえ、普通はレベル10でランクアップするものなの!というか、あんた冒険者でしょ?もっと危険で血肉踊る冒険に出たくないの?いつまで初心者ランクに留まるつもりなのよ!」
お姉さんが初心者ランクの受付をしてる限り留まります。とは言えずに、俺は返答に困って頭を
「英雄になりたくないの?」
「え?そりゃあ、なりたいですけど、英雄ランクってレベル50からですよね?王国で一番冒険者の多い、この街でも、数人しか居ないんですよ?無理無理無理!」
「あんたみたいに慎重な冒険者ばかりなら、確かに悲しい思いはしなくてもいいんだろうけど……」
お姉さんは眼鏡をクイッと上げて、大声で言った。
「あんた
がーん。俺はそんな不名誉な二つ名をゲットしていたのか。少し落ち込んで、俺は顔を引き
はあ〜。とお姉さんは溜息を
「で?今回はどんなクエストを受けたいの?」
「出来れば、スライムかゴブリンの討伐が良いです」
「はい、じゃあ、地下神殿の調査ね」
ちょっと待て。それは中級者用のクエストじゃないか。俺は、まだ初心者ライセンスなのに、お姉さんは、強引に中級者用のクエストをねじ込んできた。
ギルドは、街の人からの依頼を一手に引き受けて、クエストと言う名で、冒険者達に紹介するのが、主な仕事だ。冒険者は兎に角、ギルドからの恩恵が無ければ生きていけない。お姉さんからの横暴に、俺は
【期限】2日後まで
【内容】地下神殿のモンスター討伐及び調査
あ〜面倒だな〜。俺は宿に帰って、装備を整える事にした。
お姉さんと出会ったのは、一年前。父親の様な冒険者になりたくて、この街を訪れた。右も左も分からない俺は、直ぐにギルドに行った。父親に、とにかくギルドに行けば仕事があると言われていたので、金をほとんど持っていない俺は、心細い思いをしながら、オドオドとギルドの扉を開けた。総合受付で、初心者クエストの受け方を教えて貰って、初心者クエストの受付カウンターに行った。
そこに天使が居た。
「初めての方ですね。よろしくお願いします」
お姉さんに挨拶されたのに、
「あれ?もしもーし、聞こえてますか?」
「あっ!はい!こんにちは!」
「今日が初めての方ですよね?間違えていたらごめんなさい」
お姉さんは、何百人と来る冒険者一人一人の顔を記憶している様だった。
凄いなあ。仕事の出来る眼鏡女子って最高だなあ。と、心の中で思っていると、テキパキとお姉さんは、俺の冒険者ライセンスを作成してくれた。ライセンスには、自分の能力が書いてあって、何が出来るか、熟練度はどの位なのかが明文化されていた。
「剣技と体力の値が高いですね。まずは肉体労働系のクエストを受けてみませんか?」
「はい!それでお願いします!」
お姉さんに言われたら、初心者の俺でも、ドラゴン退治しに行くわ!と思いながらも、俺は、お姉さんが出した数枚の依頼書に目を通した。
「オススメは地下水路の掃除です。たまにスライムが出ますが、貴方の剣技の値なら、難なくこなせると思います。後は、草原での木の実集め。あまりお金にならないし、時間が掛かるけど、安全です」
「お姉さんのオススメのクエストを受けます!」
「そう?信頼してくれて、嬉しいです」
お姉さんは、ふふふっ、と笑った。笑顔も素敵だなあ。俺は、直ぐにお姉さんに会いたかったので、その日の内に、地下水路の掃除をした。スライムが出てきたが、邪魔するな!と一撃で葬り去る。愛の力は偉大なのだ。
夕方には仕事を終えて、宿を取り、シャワーを浴びた。地下水路の匂いは、結構キツかったので、念入りに体を洗った。髪を濡らしたまま、俺はギルドの扉を開けた。
「え?もう終わったんですか?」
「楽勝でしたよ」
へへっ、とお姉さんの前で格好をつけて、俺は言った。
「あ、本当ですね。依頼主から評価が来てます。評価は……S??凄いじゃないですか!!」
最高評価だ。依頼主は、冒険者からクエスト終了の連絡を受けると、確認して、冒険者へ評価を付ける、と言う決まりだった。シャワーを浴びている間に、評価を付けてくれたんだろう。ありがとう、依頼主!
「初回から最高評価なんて素晴らしいです!またクエストを受けに来て下さいね。これは今回の報酬になります」
有頂天になった。またお姉さんに会えるのかあ。俺は、お姉さんから数枚の銅貨を渡されて、満面の笑みで言った。
「明日も来ます!」
それから毎日通った。お姉さんに会いたくて、クエストは、兎に角、早く終わらせた。依頼主からの評価は、いつも高くて、お姉さんは俺の事をお得意さんとして認識してくれる様になる。
だが、それが問題だった。普通、レベル10になるのには、1年位掛かると言われているのに、半年でレベル10になってしまった。
こ、これはまずいぞ。お姉さんは初心者ランクの担当で、中級者になると、別の人が担当になる。直ぐに冒険者仲間に相談した。
「ランクアップしなければいいんじゃねーの?」
「ランクアップって自動的になる物じゃないのか?」
酒場でエールを奢る事を条件に、冒険者仲間は俺の相談に乗ってくれた。
「ランクアップは、冒険者が申請して、受付が認めた冒険者にしか許可が出ない。まあ、お前なら、余裕でランクアップ出来るんだろうけど……」
冒険者仲間は、ニヤニヤしながら、俺に言った。
「お前、あの受付の姉ちゃんに惚れてるんだろ?」
「なななな、何の事だ?」
「隠すなよ。って言うかバレバレだぞ。受付の姉ちゃん以外のギルド職員は、皆、気付いてるよ」
「そ、そうなのか」
俺は焦りを隠せず、恥ずかしい思いで、顔が真っ赤になった。
「まあ、美人な方だとは思うけどよ、少し硬っ苦しくないか?仕事一筋!男なんて興味ありません!みたいな雰囲気だしよ」
「馬鹿野郎!そこが良いんだよ!真面目で優しくて、あの人は天使だよ!」
「ベタ惚れだな、おい」
冒険者仲間は、残ったエールを一気飲みして、俺に言った。
「ギルドの受付ってのは、冒険者と付き合う事が多いんだぜ」
「詳しく聞かせてくれっ」
俺は冒険者仲間の為に、直ぐにエールのおかわりを頼んだ。何が何でも聞かせて貰う。
「ギルドの受付ってのは、冒険者の懐事情が手に取る様に分かるだろ?クエストの手配は、受付がやってる訳だし。基本的に冒険者ってのは高給取りだ。甲斐性もあって、強い男となると、普通の女なら放っておかないだろうが」
「なるほどな!俺、今からギルド行ってクエスト受けてくるわ!じゃあな!」
「だから!てめぇは、少しクエスト受けるのを控えろ、馬鹿!またレベル上がるぞ!」
冒険者仲間は、笑って言った。
そして現在。レベルは15になった。お姉さんに、しつこくランクアップしなさい!と言われ続けて半年、そろそろ誤魔化すのも限界だな、と思いながら、準備を整える。さて、地下神殿の調査に行くか。俺は愛刀を腰にぶら下げて、宿を出た。
数時間後、クエストを終えて、ギルドに向かっていると、冒険者仲間に声を掛けられた。そのまま、酒場に引きずり込まれる。
「なんだよ?」
「お前、聞いたか?イケメン英雄冒険者の話!」
「初耳だよ、なんかあったのか?」
「お前が、お熱の受付の姉ちゃんに、結婚申し込んだらしいぞ!」
「なんだと!!??」
俺は、全速力で走って、ギルドに向かった。
「あら臆病剣士さん。クエスト終わったの?」
お姉さんはいつも通り、何も変わらない雰囲気で、俺に言った。
「あ、はい!これ、調査結果まとめた報告書です」
「君、いつも丁寧に書いてくれるから、本当に助かるわ。他の冒険者も見習って欲しいよ」
「あの、聞きたい事があるんです」
「何かしら?」
「プロポーズされたって、本当ですか?」
お姉さんは、あはははっ、と笑って俺に言った。
「あんなの只の冗談でしょ?真に受ける訳がないわ。顔は良いけど、あの人ちょっと軽薄な所があるし、誰にでも声掛けるのよ」
「プロポーズ、受けるんですか?」
真面目な顔をして、俺はお姉さんに聞いた。こっちは本気なんだ。ちゃんと答えて貰わないと困る。
「好きな人が居るのよ」
お姉さんも真面目な顔をして言った。ショックで膝から崩れ落ちそうになったけど、なんとか
「そうだったんですね」
「ところでランクアップする気にはなった?」
お姉さんのいつもの質問に、俺は
「今、ランクアップする覚悟が出来ました」
お姉さんの事は諦めよう。お姉さんが幸せになるなら、それで良い。
「じゃあ早速、中級者クエストを受けてみない?」
「そうですね、とびきり難しいクエストをお願いします」
俺は半ばヤケになって言った。
「そんな貴方にピッタリのクエストがあるわ」
俺は依頼書に目を通した。
【期限】一生
【内容】私を幸せにする事
俺は慌てて、依頼書にサインした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます