第27話



「あれ、誰かのスマホが鳴ってない?」


 はっとしたマルがカバンをまさぐり始めた。


「また親父だろ。今度は何のパーツが足りないって?」


「あ……」マルの口が開きっぱなしになった。「父さんじゃない。メロディが違うんだ。この着信音って確かアプリのじゃないかな。え……余一さんから?」


「よ、よ、余一さん? マジなのですか?」驚きのあまり瀧の語尾が変な敬語になった。


「どうしてマルのスマホに余一さんから電話が来るわけ? いつ連絡先を教えたの?」


「ええと、昨日僕らが森から帰ってきた時。正確に言うと、小夜の叔父さんの家に着いた時かな。『君たち、明日は子供だけで帰るんだろう。途中何か困った事があったら私に連絡しなさい。助けになるよ。誉田に近ければすぐに迎えにいくから』って言ってくれたから」


「知らなかった! マル、全然教えてくれなかったし」


「言う必要もないかなって。まさか向こうから連絡がくるなんて思わなかったし。あれ……よく見たらビデオチャットの着信だ」


「おいおい、何の・・交換をしたんだよ。電話番号じゃないのか?」


「いや、余一さんがQRコードを見せてきたから……『Speak』の」


「『Speak』って、めっちゃチャットアプリじゃん! そもそもあの爺さん、スマホなんて持ってたのかよ?」


「うん。Zexperiaゼクスペリアの195Zだったと思う」


「ぜくすぺりあのいちきゅーごーぜっとぉ? それって先月出たばっかじゃないのか?!」


「今まさにハチローがCMやってる機種! 嘘みたい……」


「そうかなあ。興味がある大人なら年齢は関係ないし、普通だと思うけど。あ……説明してたら切れちゃったよ」


「大事な用事かも知れないわ!」「お前の話が長いからだ!」


「「架け直して!!」」


「二人して声を揃えて言わなくても、そうするって……ええっと、電車は僕たちだけしか乗ってないからいいよね。こっちもビデオチャット・モードにして、宛先選んで……」

 

「こっちに画面を傾けろよ!」


「相手の声、聞こえるようにしてね」


 マルがゆっくりペースで操作するのを、瀧と小夜がヤキモキしながら見守る。


「はいはいはい。じゃあ僕もこっち側に移動するよ。あと、スピーカーホンもONにしてと。設定完了。準備できたぞ。じゃあ通話開始……呼び出してる……あ、応答してくれた。『接続確立中』のメッセージが出ているから、間もなくつながるよ。えーと、もしもし――」

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