第13話



 ここで時を前日まで遡る。



「本当にそんなちゃちいモノで爺さんたちを騙せるのかね?」


 滝はあたりに無数に生えているススキを引き抜きながらぶつぶつと言った。


「文句が多い! それに『騙す』って言い方止めてよ。人聞き悪いじゃない」


「だってさ。採ったススキの束丸めて、紐で根本縛って目を付けて『はい、森っ子でちゅよ~』だぞ? これを神の森のフクロウだって言うには、ちょっと安っぽ過ぎやしないか? わっぷ!」


 瀧の顔に草の束が飛んできた。


「いい加減にして!」小夜は耳タコ級に瀧の不平を聞かされ、ぷりぷりしていた。「ちゃちくも安くも無い! 手伝いたくないなら叔母さんの家に帰ってよ。私とマルでやるから」


「手伝わないなんて言ってないだろ? 計画の矛盾点を、具体的に指摘しただけだって」


 地べたに座り、自分の担当の工作に熱中していたマルが、ぼそりと言った。「それより手を動かして、瀧」


「ちぇ、すっかり小夜の手下になってら。マルはいいよな。そうやってオモチャいじらせてもらえれば満足なんだから」


「オモチャじゃない。ドローンさ。こんな小さくてもローター回転数、出力ともにクラスで一番。静音性も抜群なんだよね。こんな可愛い奴はいないよ」


「はいはい」うんざりと手を振る瀧。


 けれどマルはいつになく饒舌だった。「それでも、これぐらいの重さを持ち上げるにはモーターを変えないと駄目だ。ふふ、聞いてくれる? とっておきの一品があるんだよ。本当はまだ調整中なんだけど、小夜に頼まれちゃったから断れなくて。あ、どこで買ったとか聞いても教えないから」


「……聞いてねえし。つか、何でずっと笑顔なんだよ、お前」


「ほら、邪魔しないで!」小夜が瀧を体ごと押し退けた。「ねえ、マル。例のアプリは見つかった?」


「うん、何個か候補を見つけた。機能的に使えそうなのはこの三つ。ひとつは有料だから論外。もうひとつは無料版だと使える時間が限られてた。結局、最後のこれが良さそう」


「さっすが、マル。頼りになるね。誰かさんとは大違い」


「な、なんだよ。俺だって肉体労働して、声優役まで引き受けようとしてるじゃん。どれだけ役に立ってると思ってんだ!」


「はいはい、ありがとう。美ボイスの持ち主さん」


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