〔ACT II〕 【敵意】

第37話 異国の兵

「今日は来てくれてありがとうそれじゃあまたね」

 入口で別れのあいさつをする王さん。それに合わせてボク等もあいさつをした。

「今日はありがとうございましたまたいつかお邪魔します」

「ティラミス美味しかったですまた来ますね」

 そう言い扉を開けて城を後にした。

「王、言わなくて良かったのですか?」

「このまま……とはいかないな。その内にでも伝えておかないと。アルミス達にも」

「……王様!」

「どうしたんだ? そんなに慌てて」

「某国の兵らしき集団がこの王国に攻めてきていると報告が!」

「っ!?」

「?! ……いったいどうなっているんだ。あの国とは和平を結んだはずじゃないか」

「兵を集めて立ち向かいますか? 王よ」

「交渉、とはいかないか。これも仕方ないと見切りをつけるしかないのか」


 町中をボクと美鈴は歩いていた。アルミス達のもとへ向かっている途中だ。

 今二人は依頼を受けてる最中。

城に行く前にアルミスをギルドのメンバーに登録したからアルミスだけでも依頼を選べるようになった。というよりかは受注出来るようになったというべきだな。

ちゃっかり前に言うの忘れてたし。

 町でチラシを配っているはず。

「あれ、ここにもいない。どこで配っているんだ?」

 ある程度の場所は聞いたんだけどな。

「もう終わったとかじゃないですか?」

「あーそうか。雑談結構長引いたからなぁ」

 駄弁り混じりの会話をしながらアルミス達を探す。

 すると空気を変えるように、唐突に美鈴は笑顔で言った。

「これって私とお兄ちゃんの”私服”デートですね♪」

 顔を覗き込み美鈴はボクの歩く足を止めた。

「どうしたんだーいきなり。言っておくが買い物するにしてもアルミス達と先に合流するんだからなー」

 不機嫌そうに歩き始め。

「私と二人きりが嫌なんですか。ひどいですお兄ちゃん」

 思っても無いようなことを。

「んなこと言ってないでしょー。用事が終わったらすぐ迎えに行くって言ってるから仕方ないんだ」

「ふふん。知ってますよーちょっとからかっただけです。やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんですね」

 どうやらいつもの笑顔に戻ったようだ。

「それは、ボクの性格が変わってないって意味で?」

「もちろんです。いつもの私の好きなお兄ちゃんってことです」

「そりゃどうも」

 それにしてもまたからかわれたか。いつもされてばかりな気がするんだけど、なんでだ。


「お姉様! 向こうから何かやって来ます!」

 王都の外。指定数の魔物討伐中。

「あれは兵かしら。しかもあの数の団体。……まって! クル逃げて!」

 団体魔法、集まれば強い魔法だ。

その大勢の詠唱が聞こえたアルミスはクルに逃げるように言った。

「お姉様?」

「あれは団体魔法よ、御丁寧に詠唱してくれちゃって。この数じゃ押し負けてしまうわ。どうも敵意むき出しみたいだし」

「でも……! それではお姉様は!?」

「ここで食い止めるわ」

「それなら私も!」

「クル。あなたは壱曁達と合流して一緒に兵を集めてきて! ここから近い大通りに壱曁達は居ると思うから」

 妹を庇う、前に行かせないように手を横に伸ばした。

「お姉様……。分かりました呼んできます! だから無事でいてください、お姉様」

 王都に走っていく妹を背に言った。

「はあ、私もバカよね。どうしてこんな無茶に立ち向かうのかしら」

 体内にある魔法の力が減って、規模の大きい魔法を使うのが難しい状況。

 決して自分の力量に自信がない訳じゃない。

が一度は嫌った王都を、自分の家族を奪った王の国を。無理をしてまで守るべきなのか不安が過る。

 でもそれでも。だからといってここで何もしない訳にはいかない。クルをここから逃がしみんなを、家族を守る為には。

そう考えると身体は意地汚く動いていた。

 決意を固め、アルミスは魔導書を横に神経を尖らせ集中した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る