航海の唄

隅田 天美

序章

 彼らは獲物を待ち続ける。

 人々の群れに紛れ、様々な場所で生きている。

 妖怪や宇宙人など空想の生き物ではない。

 今現在を生き、我々と同じ人として生活している。

 大学に通い勉学に勤しむもの、仕事に精を出すもの、夜の酒場で他の人間と談笑するもの……

 彼らは人々の生活に溶け込んでいる。

 相手に何の感じさせず、彼らは『よき隣人』として傍にいる。

 だが、微笑みの奥底で、彼らは密かに牙を磨いている。

 そして、しかるべきに備えている。

 光と闇の淡い間。

 無粋なアスファルトとコンクリートの森の中。

 芥のようなインターネット空間。

 そして、あなたと横に、もしかしたら、彼らは息をひそめ生きている。

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