第48話
「ひとまず話を戻すぞ。どうして、俺と麗佳が参加者だと分かったんだ?」
「勘……って不確かなモノじゃないんですけど。まず麗佳先輩があの更衣室使ってんのおかしいなって」
あの更衣室とは前日の身体測定で作戦を結構した更衣室の事だろう。あそこは基本的にリア充が使うものって共通認識が生徒間にある。
「どうしただ? 麗佳がみんなの憧れだし、使っていてもおかしくないだろ」
「いや、どうでしょう。麗佳先輩ってスペックめちゃくちゃ高いですけど、ぶっちゃけぼっち気質じゃないですか」
「……お前、それに触れてやんのは止めてやれよ、ホント」
「違いますよ、ぼっちは事実ですけれど、それ以上に麗佳先輩って気質がもうぼっちなんですよ。変に気遣うタイプって言うか、色々気にしぃっぽいっていうか……、色々消極的なんですよ、あの人」
「……ああ、まあそういうタイプかもな」
数日、あいつと行動を共にして分かったのは、あいつは人付き合いに対して一歩退き気味と言うか、どうも気遣いが過ぎるタイプである気がする。
こう言うタイプは確かにリア充的と言うよりはどちらかと言うと、ぼっちタイプっぽい。
「だからああ言う場所で着替えるってよりは基本、教室で着替えるタイプでしょ、あの人。それに加えてなんとなーく視線感じてましたし。それでピーンと来たんですよ、参加者かもって」
俺のたれ込み関係なしに若干疑われていたのか……。
それにしたってこいつ、意外と勘鋭いな。
「それで、なーんか証拠掴めそうだなって思って、友達と別れてそれとなく更衣室の方見張ってたんですよ、そしたらもう笑っちゃいましたよ。なにせ先輩が出てくんですもん。さすがに麗佳先輩が痴漢を手引きしたとは思えないから、もう参加者で確定じゃないですか。わたしってホントついてる♪」
「そりゃ、まあ、失策だったな……」
俺、今日の朝、『アドバンテージはこっちが握ってる』とか考えてたんだけど……。馬鹿かな?
「ん、あれ? そう言えば、あの状況で麗佳先輩が先輩を庇ってるとしたら、先輩は麗佳先輩のロッカーに入っている訳で、それで麗佳先輩は確かキャミソール姿になって、それでロッカーにはちょっとした隙間が……、……………………、あのちょっと良いですか、先輩」
「何でしょうか?」
どうやら要らぬ事にまで気づかれたらしい。俺は判決を下される前の死刑囚のような面持ちになる。
「ぶっちゃけ、わたし、先輩は覗きって行為までしたとは思ってないんですよ。麗佳先輩と一緒だった時点でそういう事ができたとは思えなかったし。けど、その……もしかして、あの時、麗先輩の事、……覗いてました?」
「…………」
「うーわ、さいっていですね、ホント」
舞島の目つきがゴミを見る目つきに変わる。おおう……、普通に話していた手前、こういう目つき向けられると、常時蔑まれるよりきついな、マジで。
「それ麗佳先輩は知ってんですか? 何て言ってたんですか?」
「知ってて一応、許してくれたな」
「聖人君子ですか? ……ちなみにわたし達は覗いてませんよね?」
「それはマジで覗いてない」
「それは、……まあそうなんでしょう。でも、うわぁ……、わたしとしても良いネタ入手してるし、これ以上何も言いませんけど……、麗佳先輩凄いですね。わたしとしては、この件に関しては他人事なので、これ以上追求する気もないですけど。でも、うわぁ……」
うん。蔑みの視線に慣れているとは言え、これは普通にきついわ。死にたい。
結構鉄の意志で覗かなかったんだが……、まあこの蔑みは仕方ない。甘んじて受け入れよう。
「それにしてもお前、何で麗佳の事、あんな敵視してんだ?」
この話題では体裁が悪すぎるので、かねてより気になっていた事を尋ねる。
すると、
「それを先輩が気にする必要がありますか?」
と返された。
つまりは聞くなと言う事であるらしい。
「ま、少しだけなら教えてあげても良いですけど。昔、わたしは麗佳先輩から酷い事されてるんですよ。それで、ちょっと敵対モードって訳です」
「酷い事ねぇ……。あいつがそんな事するとは思えないけど」
麗佳はここ数日から分かる通り、意味もなく人をイビったり、嫌がらせするタイプじゃない。しかも、あいつはその事に憶えがない。恐らくだが、事実だろう。
「腑に落ちないって顔してますね。分かりますよ? あの人自身はわたしから嫌われている事実に見に憶えがないんでしょ?」
だからむかつくんですけどね――――と舞島は静かに言う。
「わたしと先輩の事について教えてあげるのはここまでですよ。そんな事はさておき、麗佳先輩を裏切ってもらいますよ。そして、あの人を一緒に倒します。良いですよね? せーんぱい♪」
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