第47話
そう来るか……、とは言え予想外であったとは思わなかった。
舞島は俺に対して命令を好きにくだせる、絶対的なカードを手に入れている。さらに心臓を握られているに等しい俺は、舞島を裏切る事ができない。
裏切らない仲間がバトルロイヤルでいるなんて、それほど有利な状況はない。バトルロイヤルで仲間を作るのは一種常套手段と言えるだろうが、常に悩まされるのは組んだ仲間からの裏切りだろう。
俺は麗佳の性格上、早々裏切る事はないと思っている。しかし、万が一に備えて奥の手は用意している。
だが、その恐れが一切要らないというのは普通に考えて最高だ。
だからそう来る可能性があるのは最初から分かっていた。
まあ「自害しろ」と命令をくだされるよりは、いくばくかマシだったと言ったところ。
この場合、話を受け入れるより他にない訳だが……、その前に最後の抵抗はしておこう。
「麗佳? なんでそこで麗佳が出てくるんだ? あいつは参加者なんかじゃ――――」
「せーんぱい♪」
舞島はそれだけ口にしつつ、にこりと笑った。
……何が言いたいかはそれだけで分かってしまう。
「……分かったよ。麗佳も参加者で、俺はあいつと手を組んでいた」
麗佳、すまん! と俺は心中で謝罪する。
情報の流出。これもまた、バトルロイヤルで手を組む事のリスクの一つ。
だが、バトルロイヤルで手を組むメリットはそれを上回る。だから舞島は俺を勧誘している。
「ひとまず聞いて良いか?」
「ブラのサイズをですか?」
「舞島、俺はもっと真面目な話をしようと思ってだな本当に聞いて良いんでしょうか?」
「うわぁ……ホントに聞いてきちゃいましたね、先輩。録音しとけば良かったです。もっと使える証拠握れたのに」
「しまった、つい」
でも、ずるくない? そのおっぱいでその言葉言われたら我慢できる奴っている?
まあ普通、我慢はできますよね、そうですね。俺がクズでした(開き直り)
「くすくす……でも、そういう隠し事のできない人、わたしは好きですよ。正直、ちらちら胸に目線落とすのは勘弁して欲しいですけど」
「……そういうのって気づくものなの?」
「まあ、大体」
じゃあ俺、今すぐ目潰すしかないじゃん。
「いやらしい人ですね、先輩は……。童貞臭くてキモいです、ホント」
「まあ、童貞だしなぁ」
「…………、そういうの普通は隠さないですか?」
「高校生で経験してる奴なんてそんなにいないから大丈夫だろ、多分」
「…………」
「え、何その意味深な無言。いないよね?」
え、いるの? 高校生で!? わぁ、リア充ってすげぇなぁ! 大人だなぁ!(現実逃避)
「ぶっちゃけ経験してる人はいっぱいいると思いますけど、経験していない人もいると思いますよ、普通に。それとは関係なく先輩はキモいですけど」
「じゃあ童貞臭いってなじる意味ないよね?」
小生意気との前評判だけあって、意味なく凄い勢いで存在を否定されている気がする。俺、先輩なのになぁ……。経験値では間違いなく、こいつに俺は負けてるけど。先輩としてイキれるだけの人生経験がなかった。辛い。
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