第9話 『行き止まりの壁』

ユリアナさんの目の前に浮かんだ

『はい。ふたりだけでおはなししたい』

という金色に光る光の文字を見て満面の笑顔になったユリアナさんは皆の方に向き直り息を大きく吸い込んでから


「みなさん。私は少し疲れてしまいました。この子と別の部屋で休んでいますから何かあれば声をかけてください」


そう言って俺を抱えたままで、ベッドの上から起き上がって部屋を出てゆこうとすると、数人の侍女達が集まってきて

「では私達もお供いたします」

と言ってユリアナさんの後について行こうとしている。


「いえ貴方達は来なくて良いわ。一人でゆっくりと横になりたいのよ。あなたたちはここの片付けを優先して欲しいの」


と軽く笑顔を作り小首をかしげながら侍女達へ優しくお願い。

ユリアナさんって人を使うの上手・・だな

人の心を一瞬で小枠してしまってる。


侍女達は

「承知致しました」

と言って崩壊した部屋の中に散っていった。

今さっきまでは驚いておどおどとしていたにも関わらず、一瞬で堂々と指示を出している。流石は公爵家の奥方様伊達に上に立ってるだけじゃないって事か。


「さ~行きましょうね~うっふっふ~」

とウキウキなユリアナさん?

『切り替え早すぎですよユリアナさん。その明るさが逆に心配になってくるのは何故なんだろう?』


ユリアナさんは崩壊している今居た部屋のドアを開けて、部屋の外に俺を抱いたままで出てきた。

そして迷いなく建物の通路を進み出す。

今さっきまでいた部屋は1階にある部屋の一室みたいだ。

多分俺を生むために、医者などがでは入り出来やすいようにあの部屋を使っていたみたいだ。


此処はストレイア公爵領の中心にある人口500万の人都市エストレイア

そのエストレイアの中心に立つストレイア城の一階の通路をユリアナさんは奥へと進んでいる。


何処に行くつもりなんだろう?

俺を抱えているって事はあまり遠くに行くつもりは無いのだろう。

通路を只管に奥へと進んで突き当たりを左に曲がってゆく・・


でも其処は2メートルほど進むと行き止まりの壁だった。

ユリアナさんは尚も歩みを止めずに行き止まりの壁の前まで歩いて歩みを止め手を壁に翳すと、壁に突然ドアが出現する。

そのドアを開けるとそこは・・・


『トイレ・・・ですね』


広さ4畳半くらいの部屋で中央に便器

そして便器の周りの壁に設置された本棚には魔法に関する本が整然と天井まで本棚に詰め込まれていた。


そしてユリアナさんは・・・


つづく・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る