Action!

@502_bad_gateway

第1話 interception

隈の残った眠気眼で、あたりを見渡す。

ぎゅるぎゅるとした音だけが響く。

同僚はみな帰ってしまったようだ。私のデスクのPCだけが暗がりのフロアの中で、煌々と青白く光っていた。


私は、何のために働いているのだろう?

一息のコーヒーを飲んで、少しばかり呆けて、そんなことを考える。

「入って一年目が何を言うか、最低でも、3年はやれ!」

世の中の人はきっとこういう。

確かに、そんな「私」もいるのだろう。でも、それって、本当の「私」だろうか?

きっと、「ぎこぎこ」音を立てるこの椅子は今の私にはあっていない。


やっとのことで仕事終わり帰りついたのは、明日を迎える30分前。

あらかたの家事を終えるともうすぐ、1時を迎える。

慎重に階段をのぼり、なるべく音を立てないようにする。

この癖は、実家ではあまり気にしなくてもいいはずなのに。

大学に入るまでは登ってきた、慣れたはずのたった14段も、

今の私には全く別物に感じられる。


散らかった部屋の片隅に荒っぽくたたんであった布団をいそいそ敷いて、いつも通り、アラームを設定する。そして、5分だけ、今日を振り返る。

そして、また思うのだ。

「私は、どうして、あの時、あの大企業を辞めてしまったのか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る