閑話 だらしな嫁とバレンタイン

「お、おはよう」

俺は欠伸ながらに、「ふわぁ、おはよう。どうした?なんか顔赤いぞ?」と言った。

「そ、そんなことない」

「そうか?」

「そうよ。そ、それとわたしはこれから寝るけど、その前に」

「?」

「はい、これ」

「なんだこれ?」

 俺は月から板チョコを渡される。

「日頃の感謝とか、そんな感じのやつだから。じゃ、おやすみ。」と言った。

月は寝室に向かおうと、トタトタと早歩きで行ってしまう。

 だが、月はドアに手をかけた時、こちらを振り向いて、

「今日も仕事、頑張ってね」と言った。

 そして、逃げるように出ていった。

 月のその頬はやはりほんのりと赤く染まっていた。

「ど、どうしたんだあいつ…風邪でも引いたのか…?」

と独り言ちた俺の目に、ふと壁にかけてあるカレンダーが入った。

「あぁ、なるほど、バレンタインデーか」

 にしても、板チョコて…。

 これは昼休憩の時にでも食べることにするか、と心に決める。


「さて、今日も一日頑張るか!」

 と自分に活を入れるように声を張り上げた。

 その声は、俺の苦手な朝に関わらず、活気がみなぎっていた。

 

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