第138話 商工会議設立です!(4)

 たしかに! たしかにその通りですけど!


「…………今は、これからの問題について話し合うことが先決と考えますが? それとも無駄な話し合いによる遅延により物資の搬入の遅れて町に住まう方々の生活が脅かせれてもいいと考えていらっしゃるのですか?」

「そ、それは……」


 私を責める口調で語りかけてきた男性が沈黙するのを見て、私は内心溜息をつく。

 はっきり言って彼の言ってる事は間違ってはいない。

 責任の所在をハッキリとするのは、必要の事だし大事な事だ。

 でも……この場で、私が公に認めてしまえばどうなるのか?

 株式というのは、多く持っている者が運営権を持つ事が出来てしまう。

 だからこそ、会社を運営する場合に経営陣というのは会社の持ち株を大目に保有しておく必要がある。

 それを間違えてしまった場合、会社の経営権が別の人間が手にしてしまうことがある。

 

 私が非を認めた場合、もしかしたら「もっと株を!」とかいいかねない。

 今後の事を考えると、認める訳にはいかない。

 

 そのため過去起きた出来事は横に置いて置くとしましょう!

 まぁ、私がいなければスメラギに兵士が来てゴタゴタする事もなかったと思うけど……。


「それに! よく考えてみてください。私が来たからこそ! 今まで町の有力者であった方々が逃げ出してみなさんが今の地位に着けたということを!」


 我ながら言っておいて、ものすごくゲスイ発言だと思う。

 ただ、彼らにとっては押さえてつけている上がいなくなった事で、今の地位――ミトンの町の有力者になれたのだから、間違ってはいない。

 ただ……町の有力者達の私を見る目が何だかゴミを見るような目で見てきてるような気がする。

 まぁ、好き勝手にされるくらいなら、泥を被るくらい問題ない。

 それで町の運営がうまく回るなら――。


「ユウティーシア。お前……」


 後ろで立っているレイルさんが半ば呆れた様子で私の事を非難するような目で見ながら呟いてくる。

 まぁ、レイルさんは私が殴ったり蹴ったり色々と相手したことがあるから……。

 レイルさんからの文句は後でいくらでも受け付けましょう。

 ただ――有力者の方々の「こいつ何言ってんだ?」とか、「どの口が言ってんだ?」などと発言してきている言葉はどうでもいい。

 さてと、ここは勢いでゴリ押しでさせて頂きましょう。

「皆さんの言いたい事は理解しておりますが、ここは町の方々の生活を守る為に手伝って頂けませんか?」


 私は、集まってくださった方々の顔を見ながら話を続けることにする。

 ただ、彼らの表情には戸惑いや不信と言った感情が多く見てとれるため。


「聡明な皆様に置かれては、この町を好いているからこそ町から逃げ出さなかったと私は思っています」

「ふ……ふむ――」


 一人の男性の頷きのあと、何人もの方々が表情を誇らしげにしているのが確認できた。

 どうやら、彼らの心の内側にもある程度は、この町に思い入れがあるよう。

 まぁ打算だけの方々もいるように思えるけど……。


「さて、正直に言いますと私は町の経営については口を出すつもりはありません」

「ほう?」

「それは?」

「ふむ……」

「手出しをするつもりはない? なら何故……このような場を設けた?」

「何か考えがあったのでは?」


 多くの方々が次々と意見を上げてくる。

 さて、ここからが問題。

 私が孤児である子供達の生活向上を考えている事を、そのまま言っていいのかどうかだけど……。

 正直、これからの事を考えると関係性は匂わせない方が得策だと思う。


 だって、町の中に卸す食品関係――特に麦に関しては数十トン以上にもなるし、その出所を隠したままでは、余計な詮索から来る疑心暗鬼を作り出しかねない。

 そして適正で価格で麦を販売した時の売上が相当な額になるはずだし、売上が上がった以上、そのお金で町のインフラなどの設備投資も行わないといけない。

 設備投資をする上で各種、職業への仕事の斡旋などを踏まえたら、とてもじゃないけど一人じゃどうにもならない。

 だからこそ――。


「まず、町の運営についてですが人の生活というのは、衣食住の3つが整っていれば、大抵の事は何とかなると思っています。そこでまず、主食に関してですが、この点に関しましては、アルドーラ公国より食糧輸入がされる事になっています」


 会議室の中が私の言葉で静まり返る。

 彼らの表情は、私が何を言ったのか分からないと言ったような感じではなかった。


「どうかなさいましたか?」

「い、いや……アルドーラ公国より食糧物資の手配が出来ている事は事前に、レイル殿から聞いていたが、そんな大事な話を私達にしてよかったのかと思ってな」


 お集まり頂いた中で一際、身体の大きな男性が困惑した表情をして私に問いかけてくる。

 他の参加者の方々の顔色も皆一様に同じように見えた。

 私は、席から立ち上がり一同の見渡した後、企業の会議で説明するように話すことにする。


「まず、私は市民の目線で考えていることをご理解してほしいのです」


 公爵令嬢として転生して、貴族としての知識や義務は教えられた。

 だけど……私の本質はあくまでも日本人であり、一般市民であり社会人であり草薙雄哉であり一市民に過ぎない。

 誰かが使おうとか、誰かに指示を出すとかそういうのは面倒であり、正直言えばダラダラとグータラして暮らしたい。

 

 もっと言えばニートしたい!


 そのためには、責任あるような立場になるのなんて嫌。

 でも、私が面倒を見ている子供達には必要最低限の生活保障を支給したいと思っている。

 だから――。


「そして、一人の人間として一人で出来る事なんていうものはたかが知れています。そのために町の有力者の方に声をかけさせて頂いたのです。それと株主の権利についてですが、それは町が発展すれば発展するほど大きな利益になると考えています」


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