第132話 商工会議を設立しましょう!(22)

「わかりました。それでは説明させていただきます」


 私は、フィンデル大公の目を見ながら切り口を考える。

 リースノット王国と、アルドーラ公国との力関係は国から出る際に調べた限りでは、軍事、経済ともに大きく溝が空いていた。


 問題は、アルドーラ公国の大公が直接来られてるという点。

 そして、私が手紙を出してからの意思決定までの期間が短すぎる事。


 ここから分かるのは、アルドーラ公国内は、もしかしたら私が国から出る前に手に入れていた情報よりも大変な事になっている可能性があるということ。

 

 ただし、アルドーラ公国側に国内は上手く行ってませんよね? と、直接的には聞くことはできない。

 それは、商業の取引上好ましい方法ではない。

 

 私は、フィンデル大公とスペンサーへと視線を向けるけど、スペンサーだけは少し眉を動かして体を硬直させているけど、それは以前のやり取りの影響と排除することにする。


 そして――アルドーラ公国フィンデル大公は、落ち着いた様子で私の視線を受け止めている。

 とりあえずは、手紙を送った際の条件提示を出して取引内容を煮詰めるのが先決。


「それでは、アルドーラ公国フィンデル大公様。このたびは、ミトンの町までお越し頂きありがとうございます。まず、お送りしました手紙の内容ですが――その内容に書かれていた通りになります」

「ふむ――」


 フィンデル大公は私の言葉を聞いて片眉を上げて、見透かすような目で私を見てくる。


「――して、スペンサーが受け取った手紙であるが……我が国に白色魔宝石と交換で食糧を輸出して欲しいと言うことであるが、相違は無いか?」

「そのとおりです」


 私は、フィンデル大公の言葉に即答する。

 とくに隠し立てするほどの事でもない。

 

「なるほど……して、その白色魔宝石と言うのはどのくらいあるのだ?」

「個数はお伝えできませんが――それなりに保有しているとだけ……」

「ふむ……」


 私の曖昧の言葉にフィンデル大公は白い顎鬚に手を当てるとしばらく何かを考えているかのような仕草を見せた。


「父上、交換のレートを決める前にどの程度の在庫を保有しているか確認しませんと……」

「そうだな……」


 スペンサーの言葉に、フィンデル大公は頷くと私を二人してみてきた。

 ――なるほど。

 どう考えても、いまのやり取りは……こちらの在庫を確認んするための芝居にしか見えない。

 つまり……。

 

「ユウティーシア嬢、まずはどのくらいの白色魔宝石を持っているのか聞きたいのだが?」

「それは、軍事転用に当たって――と、いう事でいいのでしょうか?」


 私の言葉にフィンデル大公は笑みを深くする。

 リースノット王国から出る際に、アルドーラ公国とリースノット王国の間には、そこまで軍事的差異は無かったはずだけど、あっても数倍。

 でも人口比率から言えば、アルドーラ公国はリースノット王国の20倍以上の民を抱えており一時的な軍事的優位はあったとしても持続的軍事進行は出来ないはず。

 リースノット王国の人的国力では、他国を管理するのは難しいし、アルドーラ公国が数か月耐えただけでセイレーン連邦や軍事大国ヴァルキリアスが何かしらの行動を起こす可能性もある。

 それに、国交的には良好とまでは言えない海洋国家ルグニカの問題もある。

 それなのに、他国を攻める可能性は――。

 

 私は、目の前に座っているフィンデル大公の表情を見ながら、必死に現状の国家バランスを考える。

 そこで――。

 

「卸した商品をどのように扱うかは商人の手腕であろう? それに軍事関係について語るなど――どういうことかユウティーシア嬢ならわかると思うが?」


 フィンデル大公の言葉に、私はそっと唇を噛みしめる。

 他国の問題を聞くということは、アルドーラ公国内の詳細国内情報を持っていませんと暴露しているのと同じ。


「いえ、やはり自身が取り扱う商品をどのように扱うか気になりますので」

「ふむ……そうか。では、どれだけの在庫があるのかね?」

「在庫に関してはお伝えできません」


 私の言葉にフィンデル大公の視線が鋭さを増す。

 

「なるほど――それではレートは、どう決めるつもりか聞きたいのだが?」


 さて、ここからが正念場。


「白色魔宝石は、国家の軍事バランス・経済バランスを崩すものです。レートに関しましては……フィンデル大公様は、白色魔宝石1個あたりにいくらの値段をつけて頂けますか?」


 

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