第二章 貴族学院編  私は、悪役令嬢?

第16話 ユウティーシア10歳になりました。学校・保険制度を考えましょう

 ウラヌス公爵邸に毎日通うようになり、国力の底上げに奔走し、気がつけば、私は貴族学院に通う年齢である10歳になっていた。


 貴族間の利益の調整に、何故かこの世界で作って無いポーションの作成から流通販売経路の開拓。

 もちろんポーションの原材料は、白色魔宝石を砕いた粉を利用している。

 土壌の改良はこの時代の科学では無理とすぐにあきらめた。

 私は、さつまいもに似た作物を植えて収穫量を増やすことにし、種イモの配布は、ウラヌス公爵家に一任していた。

 おかげで収穫量がようやく安定してきたところだ。


「ユウティーシア殿」

 私は、資料に目を通している時にウラヌス卿から話しかけられた。

 

「はい、どうかしましたか?」

「明日から、貴族学院に通うとシュトロハイム卿から聞いていますよ? それなのに、ここに来て大丈夫ですか?」

 

 大丈夫も何も……。

 現在の、シュトロハイム家の経済状態は極めて良好。

 私が毎日作り出す、白色魔宝石を国に売却する事で、それを軍事に転用。

 

 さらに私がウラヌス公爵家経由で提案した、白色魔宝石を砕いて作り出した粉を受け皿に入れる事で魔力を引き出すシステム。

 そのシステムで、長時間稼働する魔動具の作成にも成功している。

 おかげで、魔法帝国ジールからは、かなり恨まれているようだ。


 ただ、魔動具の購入は、軍事国家ヴァルキリアスやアルドーラ公国、海で渡った海洋国家ルグニカがメインなので、外貨の獲得にも事欠かない。


 そして外貨が獲得出来れば周辺諸国から資源を購入し加工し売ればいいだけ。

 一昔前の昭和時代の加工貿易をおこなっていた日本の状態になっており、この5年でリースノット王国の経済状態は、かなりの上向きになっている。


 白色魔宝石の素材であるもっとも低級な魔法石については、周辺諸国から安く買い取ってリースノット王国で高値販売していた貴族達を利用して手に入れている。


 おかげで私が白色魔宝石を作れるという情報は、3公爵家と王家以外には判明していないと思う。

 問題は……軍事国家ヴァルキリアスくらいだけど、何も行動を移してこないと言う事はそんな可能性もないと思うけど……。


「それよりも、この報告書に書かれている軍事国家ヴァルキリアスの皇女アリス暗殺の件ですが、報告が上がってくるまで3年もかかっているのはいささか問題だと思います」

 私は資料を見てため息をついた。

 軍事国家ヴァルキリアスの暗部ユニコーンの暗殺、偵察能力が高すぎる。

 おかげでこちらが新設したばかりの他国偵察班がまったく役にたっていない。


「そんなにすぐには、芽は出ませんからね」

 ウラヌス卿は、人ごとのように言っているが情報部門は私のお金で運用している。

 もちろん委託先は、ウラヌス卿とハデス卿に任せているけど。

  

 まぁ、今更言っても仕方ない事だからあれだけど……。


「仕方ありません。明日から私はしばらく貴族学院の方に通う事になります。しばらくの運営は、お任せします」

 私は、新しく書き上げてきた資料をテーブルの上に置く。

 ウラヌス卿は私が置いた資料を手にとって目を通していくと、私を見て微笑んできた。


「なるほど……ですが、これをすればユウティーシア嬢が稼いできた莫大な資産の大半が吹き飛ぶ事になりかねませんよ?」

 それは仕方ない。

 これは将来の先行投資なのだから。


「問題ありません。教育制度というのは国力に直結します。文字や言語、算数これが出来るだけで国として限られた人材を有効に活用する事ができます。これに関しては、魔法式構築研究所の人材獲得の一環として学院を建設すると言えば許可が下りるはずです」

 私の話にウラヌス卿は頷きながらも、次の資料を見て面白くなさそうな顔をした。


「これは無理です。リメイラール教会が許可を出さないでしょう?」

 そんなのは重々承知している。


「保険制度は、取り入れませんと安定した国力の維持は難しいです。怪我をしたときに、病気をしたときに、必要なお金が今の3割でしたら貴重な人材を失わずに済みますから。

それに見て頂くと分かりますが、これはあくまでも保険制度であって無料ではありません。

毎月定額のお金を払って頂く事で、安く治療を受けられるようにする事が目的です。

それに、リメイラール教会を、この事に関与させる気はありません。


ポーションで治せるものは、ポーションで治しましょう。値段は高いですが毎月定額の保険制度を利用していれば3割の負担で済むと触れ込めば加入者は増えると思います。


あとは、ハデス公爵が率いている軍人達にまず入ってもらって、デモンストレーションを行ってもらうのがいいかも知れませんね」


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