第337話

 エリンフィートの頼みと言うのは、エルフが精霊眼を持たずに生まれてくることを示唆していた。

 ただし、生まれた子供のエルフが精霊眼を持たずに生まれてくる不完全さについてはリンスタットさんと話をしていている時にある程度、改善方法は分かっていた。

 まぁ、問題は改善方法が分かっていても実行できるかどうかは別物だ。 

 

「それなら男エルフに戻ってきてもらえばいいだろ? 他種族と婚姻して男エルフが生れないんだろう? つまり、女エルフしか生まれていないと言うことは、女エルフの劣化コピーが作られてる事だと俺は考えているんだが? それか遺伝子が劣化してきている可能性もあるな」

 

 俺の言葉を聞いたエリンフィートは、しばらく考えた後に「それでは、その対策をユウマ様に依頼致します。報酬は、貴方が過去に行ってきた問題行動を妹さんに知らせないってことでいいですよね?」と語りかけてきた。

「お前……本当に良い性格しているよな」


 エリンフィートは、俺の皮肉に微笑むと。


「はい、よく言われています。特に歴代の聖人様達には言われました。それではよろしくお願いします。何か必要な物がありましたら遠慮なく言ってください」


 エリンフィートの言葉に、溜息をつきながら「分かった」と、俺はしぶしぶ頷く。


「それじゃまず、やりたい事がいくつかある。協力を要請したい」


 俺の言葉にエリンフィートは頭を傾げてくる。

 態度を見る限り人間というかエルフと変わらないんだが――いや、俺の過去の所業を知っている時点で、もう普通ではないな。


「知り合いの女性エルフから、森の生態系が変わってから問題が起きたと聞いた。その時の詳しい情報を知りたい」

「わかりました。それでは、森の生態系変化に詳しい者がいますので、その者をユウマ様の元へ派遣致します」





------------------------- 第165部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

エルフガーデン(13)


【本文】

「わかった。次に精霊眼を持たない子供達の対応だが――」

「精霊眼を持たないエルフについは、ユウマ様の好きにしてくださって構いません。精霊眼を持たないと言うことは魔力を見る事が出来ないと言うことですから――」


 エリンフィートのあんまりな言い方に、俺自身、自分の眉間に皺が寄ったのが分かった。


「つまり、エルフ達が言うように出来損ないのエルフは必要ないと? そういう認識でいいのか?」

「――そうではありませんが、魔力を見る事が出来ないと言うことは世界の真理を見る事が出来ないと言うことです。価値観の違う者同士が一緒に暮らしていても混乱しか生まないでしょう?」

「混乱か……」


 俺は、エリンフィートを見下ろしながら言葉を紡ぐ。

 

 そんな俺の視線をエリンフィートはまっすぐに受け止め「ユウマ様も分かっていると思いますが、知能のある生物は自分の理解できない存在、異なる言語に容姿と価値観から容易に他者を排除します。人の世から争いが無くならないのはそれが原因だと言うことをユウマ様も知っていると思いますから、詳しくは説明致しませんが、私が魔力を見る事が出来ないエルフを排除しているのは、無益な争いを避けるための予防策であると言うことを理解していただきたいのです」と話してきた。


「そうか――」


 物は言いようだなと思いながらも「わかった」と頷いたあと部屋を出ようとしたところでエリンフィートの方を一度、振り返ってから神と言うだけあって、人とは異なった考えをしているんだなと感じたあと部屋から出た。



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