第336話

「……ふむ。エリンフィート、悪いが考えれば考えるほど俺に落ち度はないように思えてならないな。俺は、町の皆から慕われるユウマさんだぞ? 物的証拠も無いのに人を脅してくる手法はあまり関心しないな」

「そうですか……ユウマ様の長馴染みのリリナさんならすぐ信じてくれると思いますが?」

「……」


 たしかに、すぐに信じそうであるが、どうしてエリンフィートが隣国であるアルネ王国のアライ村に住んでいるリリナの事を知っているのか不思議でならない。

 そういった魔法が存在するのだろうか?

 まあ、リリナに知らされた所でまったく痛くも痒くもないけどな!

 どうせ、知らされて信じてもユウマ君だから仕方ないよね! で、終わるだろうし。

 日頃の行いの積み重ねが、リリナの信頼を勝ちとっているな。


「ふっ――あまいな、エリンフィート! この俺を、その程度で! それだけの情報で動かせると思ったら大間違いだ!」

「――!?」


 エリンフィートは俺の言葉を聞いて驚いた表情を見せてくる。

 そして目を細めると。


「それなら、その態度が妹のアリアさんに報告されても出来るといいですね?」

「ふっ――あまいな、エリンフィート!」

「甘いですか? これは使いの者を立ててユウマさんが起こしてきた問題をこと細かく妹さんに伝えないとダメでしょうか?」

「――な、なんだと!?」


 エリンフィートは、最初であった頃とは全く別人のような顔で俺を見上げてきている。

 その表情は、絶対的優位性をとった強者のような弱者を見下すような表情。

 はっきり言って気に食わないが――。。

 【流星】の魔法でエルフガーデンを消し飛ばすような真似はできない。

 俺も無差別に攻撃を仕掛けているわけではないからな。

 そうなると、取れる手段は限りなく少なくなる。


「あらあら! ユウマ様は、聖人とか煽てられて! いい気分になったりしてたんですか!? 問題行動ばかり起こしておいて自覚せずに? これは酷いマッチポンプですね?」


 エリンフィートは、右手で口元を隠すと「くすくす」と笑っている。

 今なら分かる。

 こいつ性格が非常に腐ってやがる。

 ただ、こいつの情報の出所が、考えてもまったく分からない。

 

 そんな俺の考えを読んだかのように「私は、ユゼウ王国を守護する土地神ですから、厳密に言えばエルフではありません。ですから――ユウマ様が、この国で何をしてきたかもぜーんぶ知っています。たいへんですね? 私のお願いを聞いて頂けないと、少し口が軽くなって世間様にお話しを流布するかも知れません」


「……お、お前――」

 

 俺は、絞り出すように目の前に座っているエリンフィートを睨みつける。

 目の前に座っているのはエルフでも何でもない、ユゼウ王国の土地神。

 しかも、かなり正確がひん曲がっている神様だ。

 人の弱みにつけ込んで、相手を無理やり言う事聞かせるようなやり方とか最低の奴のする事だぞ!


「さて、ユウマ様。それとも聖人様と呼びましょうか? お力をお貸し頂けますよね?」

「分かった。だがな……お前、そういうことばっかりしていると、いつか大変な事になるぞ?」


 神を倒したことがないが何時か――。

 ただし、悔しいが今はこいつの話を聞くしかない。

 俺を尊敬している妹とかに話をされて幻滅されるとあれだからな。



「依頼を受けて頂けるようで助かりました。実は最近のエルフが抱えている精霊を視る事が出来るエルフが減ってきている件です。その事を改善してもらいたいのです」


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