第284話
イノンはそのまま帆馬車から下りていく。
さて、あとはユリカだけだな……。
「ユリカ起きろ! 町についたぞ!」
何度もユリカの肩を揺するがなかなか起きない。
まったく寝起きが悪いのか?
しばらく揺すっているとようやくユリカがうっすらと目を開けて俺を見てきた。
「ユウマさん……」
「お、ようやく目が覚めたか?」
俺の名前を呼んできたユリカに安堵して従者席に向かおうとすると洋服の裾をユリカに掴まれた。
ユリカは意識がはっきりしたのか眉を顰めて俺を見てきている。
「どうしたんだ? ユリカの言うとおり進んだら町があったぞ? 皆、もう外で待っているか食事に言ってるはずだが?」
食事と言う言葉を聞いたユリカは勢いよく起きあがる。
「ユウマさん、忘れていました。良く聞いてください」
「ん? どうしたんだ?」
ユリカがいつにもなく真剣でいて焦った表情を俺に見せてくる。
「ユウマさん、思い出したんです。【メモリーズ・ファミリー】は、人がかつて暮らしていた町にだけ生える特殊な花だったんです!」
「な!? それってつまり……」
俺は帆馬車から外に出る。
帆馬車の外にいるはずのリネラス、イノン、セレン、セイレスの姿が見当たらない。
そして町の方へ視線を向けると、そこは先ほどまで活気があった場所とはまったく別種。
廃墟となった街並みがずっと続いていた。
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