第195話
「……それはどうなんだろうか? とりあえずセイレスの許可をもらってからやれよ?」
「もう! ユウマは少し考えすぎです! その言い方だと私が問題がある冒険者ギルドの職員みたいじゃないですか?」
実際、問題があるから言っているわけであって……問題が無かったら言わないし。
「イノン、とりあえず明日の朝からは海の港町カレイドスコープで情報収集に当たるとしよう。とりあえずは、権力機構を確認しておきたい」
「はい! 分かりました!」
俺の言葉にイノンは頷き了承してきた。
そして日が暮れる前に俺たちは、イノンが待つ『移動式ギルド宿屋』に到着することが出来た。
――数時間後。
夜の帳が落ちたところで、俺は、宿屋から抜け出して建物から距離を取る。
宿から5キロメートル以上離れた所で、クルド公爵邸で出会った男が攻撃してくる姿が見えなかった原因を、俺が知りうる限りの知識から照らし合わせて考える。
ただ、どれだけ考えても答えは出てこない。
俺は溜息をつきながら、反射神経を上げるためにずっと考えていた新魔法を使った修行をする事にする。
上空数万メートルの上の大気の原子構成を組み替え金属結合した直径数センチの鉱物を、音速を超える速さで地表に落とす技。
その名も【流星】の魔法。
俺は、【流星】の魔法を発動させる。
それに伴い、音速を超える速度で俺が立っている周辺へ数千に及ぶ鉱物が断続的に降り注ぐ。
俺はそれらを必死に避け続ける。
ただ、避けきれない物質も存在しており、それらが皮膚に掠るとそれだけで皮膚が炭化してしまう。
「……これは、思ったより、やばいな」
俺は、それでも自分が弱い事には納得できない。
だから! 次々と落下してくる流星を避ける。
必死に避ける。
それでも、認識した時には、体を貫いた鉱物も存在している。
俺は集中力を切らさないように必死に【流星】の魔法を避け、終わった頃には自分の体は瀕死の状態であった。
【肉体修復】の魔法で体を修復し、再度、同じ事を繰り返した、何度も……。
「ユウマさん! ユウマさん!」
イノンが俺の部屋の扉を何度も叩いては俺の名前を連呼してくる。
俺はイノンの声を聞きながら眠気と戦っていた。
調子に乗って朝方まで修行をしていた結果、致命傷部分を避ける事は出来るようにはなった。
ただ、持続力がまったく足りず後半部分になると精度が落ちていくのを感じた。
もっと鍛錬をする必要があるが、どうしてもこれ以上強くなれるイメージが浮かばない。
「どうしたんだ?」
俺は扉を開けながらイノンの様子を見る。
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