第156話
さらに別のアース教会の者が部屋に駆け込んでくる。
「ウカル様、大変です。一部の村人がユウマ殿がこの事態を引き起こしたと暴動を起こそうとしています」
それを効いてウカルは唇をかみ締める。
そしてすぐに教会の礼拝堂に到着すると80席はある長椅子には全て村人が横たわっていた。
絨毯の上にも多くの村民が力なく座りこんでいる。
そして、ウカルの姿を見た村民達は、思いつめた表情でウカルに詰め寄った。
「ウカル様、ユウマがまた何かをしたんですか?」
「ユウマがこの事態を引き起こしたんですか?」
ウカルは呼吸を落ち着けると礼拝堂内に響き渡るように落ちつた声で村人に語りかける。
「皆様は、誤解されていますが今回の問題にユウマ君は関係はありません」
ウカルの断言する物言いに村人達の声のトーンが下がる。
「ですが安心してください。ここの教会にいる限り魔物が襲ってくる事はありません。地下に十分な食料貯蔵庫があり地下井戸もあります。
それに村人全員が暮らせるだけの居住区も地下には用意されております。
これらは、ユウマ君が一人で作ったものです。アース神教は、彼に来るべき時のためにこの教会を作って頂けるように依頼していたのです。全てユウマ君がもてる力を使い作った結果なのです。」
ウカルの言葉に礼拝堂内のザワつきが酷くなっていく。
そして……。
「そうだ!村を囲むほどの壁を作ったんだからユウマなら何とかしてくれるんじゃないか?」
「いつも俺達に迷惑をかけてるんだからこういう時に働いて貰わないとな!」
「だが朝からユウマの姿を見かけないぞ?」
「どこかに隠れてるんじゃないのか?」
「ユウマの両親に聞けばどこにいるか分かるんじゃないのか?」
村人全員の目がその場に居たユウマの両親に向けられる。
全員から目を向けられたユウマの両親は小さい悲鳴を上げて縮こまってしまう。
それを見てウカルはすぐに話を続ける。
「落ち着いてください。ユウマ君はすでにこの村にはいません。ユウマ君には教会本部で修行を積んでもらう事になっています。そのため、朝には村を出立していました」
ウカルの言葉に村人達は怒り出す。
「ふさげるな!教会は何の権利があって俺達の生活を脅かすんだ!」
「そうよ!あの問題児が一人頑張ったらそれでよかったのに!」
「そうだ、あのスライムに村から逃げ出す手伝いをさせれば?」
「教会はこの村をどうするつもりなの!こうなる事が分かっていたんじゃないの?」
「ふざけるな!ユウマを行かせたのはお前達教会の失態だ!責任取れー!」
「そうだそうだ!お前らは自分勝手だ!俺達がどうなっても良いと思ってるんだろ!」
「一人の生贄で救われるならそれでいいじゃないの!あの子を呼んできてよ!」
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