第151話
ネイルド公爵軍を撤退させてから、俺は寝込んでいた。
ここ数日間いつも魔力が抜けている気がしていると思ったら、俺は風邪をひいていた。
俺は、魔法で氷を作り頭を冷やしながら寝ている。
宿屋の客である俺の身を案じているのかどうかは知らないが、最近はイノンがちょくちょく部屋に顔を出すようになった。
部屋を訪れては、リンゴの皮を剥いて食べさせようと差し出してきたり、リゾットを作って甲斐甲斐しく世話をしてくる。
そして、その合間を縫うようにリネラスが部屋を訪れて居座って話しかけてくる。
リネラスが持ってくるのは、怪しさ満点の丸い丸薬のような物であった。
何でも飲むと一カ月くらいは寝たくならないくらい元気になるらしい。
どう見ても、どう説明を聞いてもあやしかったので手に取るとリネラスの口に詰めたらそのまま気絶していた。
そして薬の効果かどうかは知らないが、リネラスは寝ずに俺に話しかけてくる。
正直ゆっくり寝たいからさっさと出ていってほしい物なのだが。
一度、出ていけ!寝るのに邪魔だと言ったら『高ランクの冒険者は、ギルドに貢献してもらっていますので様子を見にくるのは当たり前です』とか言い返してきた。
きっと暇なんだろうな。
それに目の形が円マークになっていたから、きっと嘘なんだろう。
――そして寝込んでから5日後、俺の体は完治した。
「ふむ、やっぱり体がだるいな」
ずっと寝ていたこともあり体の節々がだるい。
屈伸しながら体の状態をチェックしていくが、とくにおかしな所は見受けられない。
下着の上から洋服を着て部屋を出て宿屋を出るためにカウンターの前を通り過ぎようとすると。
「ユウマさん! もうお身体は、大丈夫なんですか?」
イノンが心配そうな表情で、俺の事を見つめてくる。
「ああ、大丈夫だ。心配をかけたな、少し冒険者ギルドに行ってくる」
「えっと、ユウマさん。ユウマさんと、リネラスさんはどういう関係なんですか?」
どんな関係か……。
派遣元の社員と派遣社員の関係に近いのか?
「雇用主と従業員って関係だな。それがどうかしたのか?」
「よかった……」
何故か、イノンが胸元に手を当ててホッとしている。
「何かあったのか?」
「――い、いいえ!何でもないんです。少し気になっただけで……」
なんだかイノンの様子がおかしいな。
風邪でも移ったか?
「イノン、俺の風邪が移ったならすぐに言えよ。何か必要な物があれば買ってきてやるからな」
イノンは、俺が風邪を患っているときに色々と面倒を見てくれたのだ。
こちらもそれなりの事で返さないとな。
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