第135話
俺は冒険者ギルドカードをリネラスから受け取ると冒険者ギルドの建物から出た。
そして歩くこと1分、イノンが一人で切り盛りしている宿屋に戻ってきた。
彼女は一生懸命がんばっているようだが顔を見ればわかる。
とても無理をしているようにしか見えない。
だからと言って俺がどうこうできる問題でもない。
肉親の死は自分自身で乗り越えないといけないからだ。
いまはそっとしておくのがいいかも知れないな。
先ほどから魔力が急速に減っていくのを感じるし今日はもう休むとしよう。
部屋で休んでいると部屋の扉のノック音で目が覚めた。
「誰だ?イノンか?」
【探索】の魔法を使うが色は緑だな――つまり俺の知ってる村人ということになるが誰だ?
イノンならすぐに返答してくるはずだし、ほかの客を客が宿泊している部屋に入れるなどしないだろう。
仕方ない、面倒だが起き上がるか。
部屋の扉を開けて訪問者を確認する。
「おい、冒険者ギルドでの仕事はいいのか?」
「定時であがりました。3年間ずっと給料もらわずに仕事していましたから。いくらでも有給があるんですよね。さあ私も給料が出ましたけど、ユウマが私に食事を奢ってくれる約束は果たされていませんから今日こそは奢ってもらいますね」
俺はリネラスの言葉を聞きながら溜息をつく。
俺はウラヌス十字軍と戦っている身なのだ。
親しくされても困ってしまう。
「リネラス、お前の仕事については、俺は何も言わんが、あまり俺に親しくするな。はっきり言って迷惑だ」
「ユウマは約束を破るんですか?」
俺の事を上目遣いに見ながらリネラスは語りかけてくる。
「わかった……約束は約束だからな……着替えるから少し待っていてくれ」
まぁ約束したのだから守らないと駄目だよな……。
とりあえずは着替えるか。
俺は、下着姿で寝ていたこともありすぐに洋服を着て部屋の扉を開ける。
「待たせたな、それじゃ好きな所へ連れていけ」
リネラスは俺の言葉に頷くと手を取り歩きだした。
俺は、リネラスに引っ張られたまま【金獅子の森】と言う食堂に連れて行かれた。
料理の値段が一人金貨5枚であった。
つまり2人で10万円分の金貨を消費してしまった計算になる。
こんな村の食堂で10万円分……味は美味かったが財布の中身が残り金貨10枚になってしまった。
「リネラス、冒険者とギルドの受付嬢がこういう所を見られたら変な勘ぐりをされるんじゃないか?」
「良いことを教えてあげるね。ユウマは気がついてないと思うけど、お金をきちんと稼げる男性は結婚相手としては優良物件なんですよ? 私も、そろそろ年齢的にやばいですしユウマがもらってくれるなら良いんですよ?」
「いや、よくないから……」
俺は即答で突っ込みを入れた。
こいつは早く何とかしないと駄目だな。
さっきから俺の事を獲物として認識にしてきてるのが伝わってくる。
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