第136話

 

「おい、そろそろ組んでいる腕を放すのはどうだろうか?」

「いやです!」


 俺はいくら好意を抱かれていようとお金を稼ぐ人がいいです!と面と向かって言ってくる女性は御免こうむる。


「リネラス、俺はお前に興味はないし、それに20歳を超えているんだろう? 年齢的に差がありすぎだ」


「え?私はまだ19歳ですけど?」


 なん…だ……と!?どう見ても20歳前半から中盤にしか見えないんだが。

 ああ、そうか西洋人はたしか老けて見えると聞いた事がある。

 見間違えても仕方ないだろう。


「そうですか。ユウマは私の年齢を高く見ていたんですね。なら私の年齢はユウマと4歳しか変わりません!さあ、愛の告白をしてください!」

「それは無理だ! お前の性格は生理的に無理だからな!」


 リネラスは俺の生理的という言葉にショックを受けたのか、その場で立ちつくしてしまった。

 俺はチャンスと思い、そのままリネラスを置いて宿屋に戻った。




 ――その頃、ネイルド公爵家の地下室では2人の男が話し合いをしていた。


「ヴァルドがやられたようだな?」


「所詮、やつは我らが四魔将の中では最弱、正面から相手と戦えぬ臆病者よ」

 

 男たちは自分たちが指に嵌めていた誓いの指輪の灰の粉を見て語る。

 【誓いの指輪】それは、盟約を交わした相手が生きてるかどうかを伝える魔道具であり4魔将は全員が盟約を交わし指に嵌めている。


「俺がヴァルドを倒したという奴を探し出して殺してきてやる。魔法師殺しのヴァルドが殺せなかったってことは俺やお前みたいな戦士タイプなのだろう。なら俺に勝てる奴がいるとは思えない。この怪力無双のラグルドが引導を渡してきてやろう」


 ラグルドが席から立ち上がる。


「ラグルド、失敗は許されないぞ?私たちはネイルド公爵家の直属の精鋭部隊を束ねる者だ。貴様が敗れればネイルド公爵家の支配力の低下が起きると言う事を忘れるなよ?」

「いつになく饒舌だな?瞬殺の殺し屋ガムルとは思えないほどだ。安心しろ! 俺にはこの鍛え抜かれた肉体がある。この肉体は全てが最高レベルまで鍛え上げられている! 任せておけ!」


 部屋から出ていくラグルドを見ながらガルムは思考する。

 たしかに如何なる魔法をも弾きあらゆる特技や武具すら貫通しない肉体を持つラグルドは誰にも倒せないだろう。

 倒すなら水の底に沈めて窒息死させるくらいしかないが、日照り続きなのにそれだけの水を確保できる人間がいるとは思えない。


「またラグルドの怪力無双の二つ名が鳴り響いてしまうか」

 

 ガルムの一人呟いた声は部屋の中に反響し消えていった。




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