第117話

 カークス達と分かれた後、俺はしばらく歩くと地図を見る為に【光球】の魔法を発動させる。

 そして懐からアライ村長の家から拝借してきた地図を見ながら考えていく。

 まずは、これからの方針だ。

 

 アライ村から出てきた俺がする事は、派手に動いて相手の関心をこちらに引き寄せる事。

 そして魔王としてキチンと認識させる為には、魔王として動かないと行けない理由だが……。


「魔王って何をすればいいんだ?」


 俺は一人で呟きながら首を傾げる。

 そもそも、ウラヌス十字軍が考えている魔王の定義は強い魔法が使えて魔物を使役出来る事にある。

 魔物を使役するには契約が必要だが……。


「そういえば、俺って妹が使い魔契約したから使い魔契約の魔法とか知らないな」


 本来ならヤンクルさんから使い魔契約の魔法を、スライムと契約するときに教えてもらうはずであった。

だが、妹が契約をしたことで教わっていない。

 致命的なミスである。

 そうすると魔法とか魔王らしい振る舞いで演技をしないといけなくなる分けだが。


「ふむ……。想像もつかないな……」


 一人顎に手を当てながら考える。

 とりあえずは、俺の頭の中にある知識を総動員していく。

 俺の頭の中にある知識には魔王というのは残虐非道な人間のゴミみたいな奴という印象がある。

 つまり、俺は悪くない!相手が悪いんだ!

 もっと言えば俺の生活が苦しいのは世の中が悪い!みたいな感じか。

 良く分からないな……。

 とりあえずは尊大な態度というか、そんな感じが必要だろうな。

 貴族や王族相手にも、おい!お前!みたいな言い方が良いかもしれない。


 あとは、無償で善意を行うのは魔王らしくないから対価をもらう方がいいだろう。


「くくくっ、畑を耕して欲しければ! それ相応の謝礼を用意するのだな!」


 こんな感じか?

 まぁ、くくくっ!っと言うのはいらないのかもしれないな。


 でもまぁ、何かと魔王宣伝していけばそのうちウラヌス十字軍も俺の後を追ってくるはずだろう。

 そうだろう、そうだよな?

 これも全て妹アリアを守るためにウラヌス十字軍の視線をこちらに向けるために必要なのだ。割り切るとしよう。

 

 大まかな方針を決めたところで俺は地図を確認する。

 

「それにしても町も何も書いてないのがこまるな」


 俺は手元の地図を見てぼやく。

 アライ村長の家にあった地図はアルネ王国内の自国内ですら鮮明に書かれていない簡略化されていた地図であった。

 いくら地図が国家戦略上、重要な物であったとしても、これはちょっと困るな。


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