第108話

 俺は昨日、エルスに出された麦粥を食べた後に腹痛でコーク爺さんの診療所に連れて行かれた。

 先日は目を閉じていて分からなかったが、コーク爺さんは白衣を着た初老の男性だった。

 男の名前は、コークと紹介された。

 コーク爺さんの家は代々医者の家系らしく昔の出来事にも詳しいらしい。

 だが、腹の痛みが酷かった俺は、薬を貰った後すぐエルスに家に戻ろうと提案した。

 だが、エルスは診療所にしばらく居ると言う事だったので、俺は先に家に戻り魔法で水を出して薬を服用した後に横になった。

 

 そして……一晩経ったら腹痛は治まっていた。


「朝食を作ったけど食べられる?」


 ……エルスさんや、貴女は昨日、俺に何をしたのかお忘れですか?

 

「いや、お腹が空いてな……頂こう」


 なんだよ、そんな捨てられた犬みたいな顔をされたら断れないじゃないか。

 まぁ昨日は、体が衰弱していただけだ。

 だから胃が驚いてしまったのだろう。

 だから問題ないはずだ。

 とりあえずコーク爺さんに貰った胃薬がまだ残っていたかな?


 ――20分後


 エルスが仕事に行くと家から出た後に、俺も走ってコーク爺さんの所に向かった。

 扉を叩き驚いたコークさんに事情を説明し薬を貰って一息ついていると。


「あの子とはうまくやっているようじゃな?」


 コークさんが何やら意味深な言葉をかけてきたが俺は頭を振る。

 うまくやっているかどうかと言えばどうなんだろう?

 俺にはその基準が分からない。


「この村にはコークさんとエルスさんしか住んでいないのですか?」


 俺は気になっていた事を口にした。

 昨日、診療所を訪れたときは日が暮れていたので気がつかなかったが、朝の時間帯だと言うのに診療所に来るまでに村の中を歩いたが一人の姿も見かけなかった。

 村の規模から言うとユウマ村の半分も無いと思うが、それでも戸数から見ても150人前後は住んでないとおかしい。

 それなのに誰の姿も見かけなかった。


「今は、仕事に向かっておるから夕方までには皆もどるじゃろ」


 ふむ……村の位置を話したがらない事といい、普通の村ではないことは分かるけど何かあるのだろうか?

 まぁどちらにしても俺が関与することではないな。


「そうですか……」


 余計な詮索もしないほうがいい。

 それよりも……。


「コークさん。エルスより水を汲んできてと言われているのですが川の場所を教えて頂けますか?」


 俺の言葉にコークさんは眉を潜めた。


 そしてたどり着いた場所は、川ではなく沼地であった。

 水は停滞すると淀んで腐ってしまう。

 こんな水をあの人たちは飲んでいたのか?

 よく病気にならないなと思う。

 

「仕方ない」

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