第55話
「そういうモノなんですか?」
俺はエメラダ様に肩を貸してもらいながら目の前の掘りの中に視線を向けた。
掘りの中の水は時速50キロメートルの速度で流れている。
これが持続魔法だとしたら、エメラダ様の言う魔力というモノが回復しない要因だとしたら、これを停止させれば魔力が回復するようになるかも知れない。
物は試しだ。
とりあえず二重の掘りの内、内側の堀の水だけ止めてみよう。
《水流停止》の魔法を発動させようしたところで、急に胸を締め付けられるような感覚が体を支配した。
蒸せて咳をしたところで手を口元に当てると血がベットリとついていた。
何だコレはと思った途端、目の前の視界が閉ざされていき足に力が入らなくなる。
すでに立っているのかどうかすら自分自身では判別がつかない。
ゆっくりと俺の思考は闇に飲まれていった。
そんな中……
「ユウマ!ユウマ!しっかりしろ!!仕方ない。こうなったら……」
……誰かの必死で焦りを含んだ声が聞こえてくる。
ただすでに意識が朦朧とした俺には誰の声なのか判別がつかなかった。
暗い世界で俺は一人、そこに浮かんでいた。
どこまでも闇が覆う世界の中、俺は何故かそこがとても心地良い空間だと思った。
そしてまどろんでいた意識を手放そうとした所で体の中に何かが流れ込んでくる。
それは暖かな光、それは暗闇の中を照らしていき暖かい熱は体の隅々まで広がっていき、体を温めてくれる。
俺は、暗闇の中でゆっくりと自分の意識が浮上するのを感じた。
そして気がつくと満天の星空を見上げていた。
「……一体何が……」
「起きられたのですね?良かったですわ」
額の上に手を置かれる。
ひんやりとした手が火照った体に心地良い。
やわらかい枕といい、これはとても良い物だ。
少しだけ寝返りを打つと顔に布地が触れた。
「―――きゃっ!くすぐったいので動かないでください」
ん?頭の上から声がしたような……。
視線を上に上げていくとそこには大きな壁があった。
ふむ。これはなんだろうか?
手を伸ばして触れると、それはとてもやわらかい物だった。
「ユウマさん!エッチな事は駄目ですよ?」
……?
俺はやわらかい枕の上からゴロゴロ回転しながら地面の上に降り立ち先ほどまで自分が居た場所へ視線を向ける。
そこには、エメラダ様が顔を真っ赤にして胸を両手で隠して座っていた。
ふむ、どうやら俺は倒れた後に膝枕をしてもらっていたようだ。
そしてエメラダ様の胸まで揉んでしまったと……俺、ここで殺されちゃうのかな……。
「エメラダ様、申し訳ありませんでした。気がつかずに胸まで揉んでしまって……」
体にまだ力が入らない事もあり地面の上で寝そべったままで謝罪。
第三者から見たら舐めているのかーとか言われそうだが体に力が入らないのだから仕方がない。
とにかくまず謝罪してエメラダ様の機嫌を取らないと貴族様への不敬で死刑になってしまう。
親にも妹にも迷惑がかかってしまう可能性もある。
幸い、鎧を脱いでいるエメラダ様はとても発育がよくて女性的で美しい女性だ。
褒める方向のやりとりをしたほうがいいか。
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