4-7 背中に輝くは虹色の翅――〈虹煌翅展開〉

蓮丈院遊月 AP1750 VS フェズ・ホビルク AP0



「私のターン」



 相変わらず可愛げすらない無表情で俺を見つめながら、フェズがカードを引く。



「私は手札から〈スプラッシュセクシーワンピ〉をコーデする」



 次に繰り出したのは、名前の一部やカテゴリー、そしてAPの数値までもが似ているが、路線も露出の範囲も色も違うワンピース。


 セクシーの名は伊達じゃないが、着ている本人の威圧のせいで、どうにも素直に喜んでいられる余裕を与えない。



「そしてアクシデント〈アソシエイトミラーマテリアル〉を発動」



 自分のターンに発動させたのは、伏せてから一ターンも寝かせたもう一枚の伏せカード。



「ステージ上に存在するカードと同じブランド、アピールポイント、カテゴリー、レアリティをもち、なおかつ名前と色が異なるコスチュームをデッキからランドリーに送ることで、そのAP分アップさせる」



 どんなカードでもプレイヤーがどのタイミングで使うかは自由だ。


 他人のプレイングに、いちいち玄人気取りで邪魔な助言をはけるほど、俺は対して上手くはない。だが、そんな奴でも、妙なところで使われると違和感を覚える。


 再度デッキを開き、フェズが選んで抜き取ったカードを捨てることで、ステージ上の〈スプラッシュセクシーワンピ〉のAPが倍になる。



「その後、カテゴリーが異なるコスチュームを全て破壊する」


「何だと⁉」



 まるで後付けにされた説明のように後続の効果が告げられた時には、俺の靴が弾け飛んだ。



「カードを一枚伏せてターンをチェンジする」




蓮丈院 AP1250 VS フェズ・ホビルク AP1600




「俺のターン――」


「次に引くカードは、アクセサリーカード〈ドレッドボイルドバンド〉」


「ドロー!」



 もう三度目の予言と的中に、俺はもう驚かない。


 だが、相変わらず無表情の威圧感と異能の力を前に圧倒されて本来の調子がでない。


 数値では若干押され気味だが、前ターンと比べて迎撃の盤面が手薄。


 どのみち、俺の戦略など筒抜けになっている。


 どうせ攻めるなら、徹底的に場を荒らすまで。



「俺は〈スイーツリパブリック ギフトビスケットバッジ〉をマテリアルコーデ!」



 胸につけたのが、名前の通りビスケットの模造品をバッジにしたアクセサリー。


 俺はさっそく、効果の糧として毟り取る。



「〈エヴォルスワンワンピ〉の効果! マテリアルとなったアクセサリーを破壊することで、相手ステージ上のカードを破壊する!」



 手の中の砕けたビスケットが灰になるほど、再び俺の手に炎がたぎる。



「今度こそ狙いは貴様のワンピースだ!」



 再び発射される二発目の火の玉。


 今度こそ。


 いや、今回もまともに通るか。


 そう願ったときには、フェズを爆炎に包ませるほど直撃が叶っていた。


 灰煙に覆われてはっきり見えないが、これで相手も文字通り丸裸のはずだ。



「アクシデント発生――〈虹煌翅展開〉」



 朦々と煙が形を変えながら薄くなりかける中で、フェズの声が発動を宣言した。



「手札一枚をコストに発動。デッキからレアリティGRのレインボーフェザーブランドのコスチュームをランドリーに送ることで、捨てたカードよりも低いAPを持つステージ上のコスチュームを全てランドリーに送る」



 起きあがるカードが姿を見せた時、小さな竜巻が起こり、一帯の煙を一瞬で消し飛ばした。


 いや、煙どころか巻き起こる突風が俺にまで及び、着ていた衣装が全て吹き飛ばされた。


 旋風の中心には、俺と同じく一糸纏わぬフェズの姿が佇んでいるが、その背中には目が眩みそうなほど虹色に煌めく羽根が生えていた。



「――ッ!」



 今更そんなアクシデントがこられても驚愕はしない。


 だが、あれほど低レアリティのカードばかりを引き出すフェズの口から、最上級レアリティが出るなんて。


 さっきからずっと嫌な予感がしていたが、冬場の布団の用にもう一層の悪い予感が重ね掛けされる。


 これで互いのステージ上に存在するカードはゼロ。


 だが、数値に関しては【飾血】を使用したことで、-50もの損失があるが、手札の量という利点では、フェズが一枚に対して俺がまだ優勢だ。



「ランドリーに送られた〈ギフトビスケットバッジ〉の効果で、俺はデッキから二枚のカードをドローする!」



 よし、読まれているか以前に、とりあえず防ぐのに最適なカードが来てくれた。



「俺はカードを一枚準備してチェンジだ!」



蓮丈院 AP-50 VS フェズ・ホビルク AP0

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