千載一遇①

第30語 天智・天武非兄弟説

　正史『日本書紀』において 同母兄弟とされる天智・天武の兄弟関係を否定する見解。

弟である天武天皇の年齢を検証する過程の中で誕生した。後の異父兄弟説、異母兄弟説もこの説に端を発する。

　『日本書紀』上には 天武天皇の生まれた年や年齢は書き落とされているが、後世に編纂された他史料によれば 天武の没年齢を65歳とするものが多い。

　但し、その年齢を採ってしまうと、『日本書紀』における天智天皇の年齢よりも弟である天武天皇の方が年上になってしまう。このことから、天武天皇の素姓が疑われるようになった。その背景として、壬申の乱の勝者が自己に都合が良い歴史書を作ったという思いがあったことは言うまでもない。

　この説において 天武天皇の正体と目されているのは、

　　淵蓋蘇文（高句麗人）

　　金多遂　（新羅人）

など。

　なお、現在の学会の主流は、中世の史料に残る天武天皇の年齢を56歳の書き間違いだとする倒錯説。