R 原子分解銃
原子。物質の最小単位であり、それ以上分解できない構成要素のことだ。
原子が様々な形で組み合わさることで分子となり、物質としての特性を発揮するようになる。この組み合わせをいじくり回して都合の良い物質を作り出すのが化学である。
この回はその原子を破壊するらしい銃がでてきた話だ。
クローンチンピラの製造工場……もとい、儀式場を発見、制圧することに成功した。
たちの悪いことにこれがマンションの一室で、事実上どこにでも設営可能ということが判明したのだ。
マンションの部屋からクローンチンピラが出てくるところが発見されたのが理由だ。このようなミスを犯す迂闊な部下はいないほうがマシなのかもしれない。
とはいえ相手の戦略はアホを量産して事故を起こすのであちらとしてもいたしかゆしというものだろう。
これで儀式場の周囲500メートル以内にクローンチンピラが湧くということがわかったが、これ、モンスターに転用できる……というかクローンチンピラがモンスターみたいなものだ。
どこからでも突然テロを起こせる、それもゴブリンやオーク、ワイバーンみたいなのを解き放つことが可能ということにもなる。厄介すぎる。
まあ術式は写し取れたから探知可能になった。これで怪人を追い詰めて倒すことも可能だろう。逃げに徹されたらどうしようもないが。
これで一歩前進。面倒事が片付く可能性が出てくると頭を抱えずに済む。
それはそれとして、今日のガチャを開ける。
R・原子分解銃
出現したのは玩具のような作りの拳銃だった。銃口の先に球体のパーツが取り付けられており、銃身は長い三角錐と楕円形の部品で構成されている。チープなSFのおもちゃみたいな造形だ。
色合いこそ黒一色でおもちゃっぽさは脱却しているが、元の造形と素材感によって全部台無しである。
銃、それも原子分解とついたものということはだ。名称そのままの効果がある……と考えられる。つまり、危険物。人に向けてはいけないものの筆頭みたいなもんである。
当然撃たれた相手は原子単位で分解されて、何も残らないだろう。
強力な兵器はもういくらでも保有があり、それに比べて……とんでも武器でしかない原子分解銃は倉庫にでもしまっておけばよい代物ではある。
だが、おかしな特性があったりすると困るので試し撃ちはしておくべきだろう。
そういうわけで、即席の氷柱を魔法で作り出す。トラックを縦向きにした程度のもので、周囲に魔法の防壁を張り巡らしておくことでもし厄介なことになっても被害が少なくなるように構築した。
防壁に作っておいた覗き穴から、原子分解銃を氷柱に向けるように照準する。そして、引き金を引いた。
それと同時に、氷柱は光の塵となり、わずかな燃焼を残して消滅した。
ポン、と水素ガスが燃える小さな音だけだった。
え、えー……。
分解とは書いていたが、まさか起こり得る現象まで分解してしまうのか。
それとも、原子レベルで分解されたせいで、ガスとして成立しなかったのか。
細かいところはわからない。
ただ危険であるということはわかる。
後日。兄が機神に組み込み……理論上は国を一撃で消し飛ばすことが可能となった。
銃の原理が魔法だったらしく、対象の情報的な連結を分解することで分子の結びつきが極端に弱まって分解するらしく、当然食らうとどんな相手でも塵になる。
なんなら対象を限定することで原子を分解してエネルギーに変換することも可能らしい。
つまり熱爆発を引き起こすことが可能、と。
やっぱ与えちゃいけないアイテムじゃん……。
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