R 猛毒
毒。人類社会に普遍的に存在する、危険物のことである。
古来より狩猟や暗殺など、他の生命を奪うために利用されてきた一方、その中から有用な成分を取り出して薬にしようという試みも行われてきた。
薬と毒は表裏一体であり、何がどのような影響をもたらすのかわからない。
今回はその毒がでてきた話だ。
兄に魔法を使って料理することをせっつかれた。自分でそこまで使えないからって私にせっつくのはやめてほしい。
しかし、私が魔法を使って料理をするとどうなるのかというのは試しておくべきだろうか。べつにしなくてもいい気はする。やってもいい気もする。
なので今日は「リソース転換無限プリン」を作ろうと思う。
卵24個、砂糖一袋、牛乳4リットル、マグカップ4個、ヒヒイロカネ1kg、ワイバーンのヒレステーキ4枚、コンロ用ガス缶一つ、画用紙適量が材料となる、実体を保たないプリンのことだ。
高度に概念化されたプリンは何度でも食べることができ、かつ栄養価もむやみに高い。うっかり乙女が食べることで爆速で太ることが可能だろう。
作り方は(高度な魔法能力が必要なことを除けば)とても簡単。
適切な魔法陣を画用紙に書いて、材料を特別なパターンで周囲に配置して、料理用の4つの魔法を並列に発動するだけ。
そうすることで材料のすべてが概念情報エネルギー化し……経験値に変換され、それが魔法陣に取り込まれて完成である。
あとは使うことをイメージしながら画用紙を振れば食べることができる。
つくったはいいが、超常食すぎる。プリンの概念を固形化したようなものなので本当に料理と言っていいのかわからない。料理と言い張るには最悪紙をかじって食べてもらうしかないか……?
まあどうせ食べるのは兄だ。どうとでも言いくるめよう。
兄のことはプリンを渡した後放置してガチャを片付けるとする。
R・猛毒
出現したのは薬瓶だった。これみよがしにドクロマークのシールが貼られ、危険物であることを明示している。また、ガラス瓶の中にはドロリとしたどす黒い紫色の液体が入っており……誰もが一目でこれは毒だと断言するだろう。
傾ければ底から泡がたちのぼり、ゴポ……という音とともに瘴気を放っている。
見るからに猛毒。見るからに危険物。
あまりにもわかりやすく毒物だと主張するこれをどう取り扱うべきか。正直放置したい。だが、成分がわからないことには、というのもある。
とはいえ、眺めること以外に何もできそうにない。
見るからにヤバそうな瘴気を放っているため、開けることすら危険そうなのだ。無論、ただの演出という可能性もある。だが、毒として出てきたものが毒じゃないなんてことはなさそう。
厳重封印……無理そう。置く場所がない。魔法的に封印を施してしまう手はあるが、実態は結局倉庫だ。そこに置いておくなら兄が持ち出して調べるだろう。
しかし他に思いつかない……。
しかたない。ガッチガチに封印魔法掛けて放置しよう。
開けられないなら兄もそこで止まるだろ……。
後日。兄が
その結果、緑から紫の間で体色を変化させながら、体をメキメキと変化させていく
うねるような再構築を経て、そこに残ったのは、粘液状のなにかだった。溶けて柔らかくなったスライムともいう。ゼリーのような質感でプルプルしている。
そして。それは生きていた。
液体状に肉体を作り変えられながらも、その生命を存続している。
兄の命令にも反応して、その体を器用に動かしながら、粘液を回転させながら、兄の指示する順路通りに動いていく。
恐怖生命体が生まれてしまった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます